2008 Fiscal Year Annual Research Report
行為選択ルールを使った目的指向的行動における前頭前野各部位の働きとそのメカニズム
Project/Area Number |
19200027
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 啓治 The Institute of Physical and Chemical Research, 認知機能表現研究チーム, チームリーダー (00221391)
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Keywords | ウィスコンシンカード会類課題 / 前頭前野 / 主溝領域 / 前頭眼窩野 / 破壊行動実験 / サル / 作業記憶 / 報酬 |
Research Abstract |
ウィスコンシンカード分類課題をサルに訓練し、脳の部分破壊の影響観察と神経細胞活動記録を用いて、前頭前野の各部位の働きを調べている。今期は、脳の部分破壊の影響観察実験を前頭眼窩野に拡大し、顕著な結果を得た。課題では、まずサンプル刺激が表れ、次にテスト刺激が3個表れる。サルは、サンプル刺激とあるブロックでは同じ色、別のブロックでは同じ形のテスト刺激を選択し触れなければならない。正答にはビスケットの粒を与えた。マッチングのルールはブロックの中では一定であるが、正答率が85%(20試行中)に到達すると変更した。現在有効なルール、およびその変化を示す手掛りは一切与えず、サルは自分の選択反応に対する報酬の有無だけを手掛りに現在有効なルールを探さなければならなかった。前頭前野背外側部の主溝領域の両側破壊および前頭眼窩野の両側破壊で、ルール変更後に正答率が回復する過程が遅くなった。主溝破壊サル群では、85%の正答率を回復した後に試行間間隔を6秒伸ばすと、次の試行の正答率がチャンスレベルに落ち、現在有効なマッチングルールを作業記憶に保持することに問題のあることが示唆された。一方、前頭眼窩野破壊サル群では、成功試行の経験をルール選択につなげる過程に問題があった。正常サルでは、1回の成功試行の後の成功率は75%程度まで回復したが、前頭眼窩野破壊サル群では、1回の成功試行の後の成功率はほとんどチャンスレベルに留まり、数回の成功を経験して初めて正しいルールを選択的に選んだ。これらのサルでは適用したルールと報酬の間の連合を形成するスピートに問題があると考えられる。これらの結果は、主溝領域と前頭眼窩野は異なった要素的機能を果たすことでウィスコンシンカード分類課題などのルール依存行動に寄与することを示唆する。
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