2010 Fiscal Year Annual Research Report
行為選択ルールを使った目的指向的行動における前頭前野各部位の働きとそのメカニズム
Project/Area Number |
19200027
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 啓治 独立行政法人理化学研究所, 認知機能表現研究チーム, チームリーダー (00221391)
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Keywords | ウィスコンシンカード分類課題 / 前頭前野 / 主溝領域 / 前頭眼窩野 / 前帯状溝領域 / 破壊行動実験 / サル / 作業記憶の参照 |
Research Abstract |
ウィスコンシンカード分類課題をサルに訓練し、脳の部分破壊の影響観察と神経細胞活動記録を用いて、前頭前野の各部位の働きを調べている。今期は、細胞活動記録実験を前頭眼窩部および前帯状溝領域に拡大した。課題では、まずサンプル刺激が表れ、次にテスト刺激が3個表れる。サルは、あるブロックではサンプル刺激と同じ色、別のブロックではサンプル刺激と同じ形のテスト刺激を選択し触れなければならない。正答にはビスケットの粒を与えた。マッチングのルールはブロックの中では一定であるが、正答率が85%(20試行中)に到達すると変更した。現在有効なルール、およびその変化を示す手掛りは一切与えず、サルは自分の選択反応に対する報酬の有無だけを手掛りに現在有効なルールを探さなければならなかった。前頭眼窩部には正答への報酬に反応し、その反応がルール依存的である神経細胞が多数見られた。破壊実験において前頭眼窩野破壊サル群では成功試行の経験を次のルール選択に生かす過程に問題があったことに鑑み、これらの神経細胞活動は適用したルールの価値を報酬によって素早く高める働きをしていると考えられる。前帯状溝領域では、選択反応を行う前において、正答試行と誤答試行で異なる大きさの活動を示す神経細胞が多数存在した。破壊実験において前帯状溝領域破壊サル群では誤答での反応時間が短縮したことに鑑み、これらの神経細胞活動は、個々の試行において正答するために必要な神経過程、例えば現在有効なルールの作業記憶を参照にいくなどの神経過程に対応しているものと考えられる。
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