Research Abstract |
今年度は,昨年度に引き続いて臨床実用に向けた水冷表面冷却式脳温自動制御システムの試作装置の開発を進めた。その結果,幅60cm,奥行80cm,高さ180cmまでサイズダウンに成功し,現在は最新装置の動作性能の検証作業中である。これにより,本学以外での臨床応用試験が可能になるので,より客観的な脳温自動制御の評価が可能になるとともに,今後の実用化に弾みがついた。特筆するべきなのは,本装置の製造過程を中小企業庁長官が直接の指名により視察したことであり,単なる学術研究にとどまらず産業振興の観点からも大いに有望視された。また,水冷だけでなく空冷表面冷却式や血液希釈選択的脳冷却式による脳温自動制御システムの基礎開発を行い,現在試験装置の動作性能試験の準備中である。これらのシステムは,今後より省電力で高精度の脳温制御を実現させる可能性のあるものであり,システムに選択の余地があれば脳低温療法の普及をより容易にすることができる。 また,脳圧,脳血流量の自動制御の課題について企画している動物実験に対して,具体的な実験計画を立案し,現在はその準備を行っている。すなわち,実験動物の正常状態値を基礎データとして収集した後,脳虚血モデルと凍結脳損傷モデルを作成し,病態時データを収集する。これらを基礎として,浸透圧利尿剤投与による脳圧や脳血流の最適制御実験を企画している。さらに,脳低温療法時の呼吸管理のために,呼吸インピーダンスと呼吸動態の最適化制御の理論とそのシステムの設計を行い,現在はそれを実際の装置として構築する段階にある。 以上のように,脳低温療法で必要な患者管理をシステム制御技術によって支援する総合的な研究として,本研究は遅れ気味ではあったものの着実に進行した。
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