2009 Fiscal Year Annual Research Report
高松塚古墳壁画劣化要因微生物の遺伝・表現形質等基礎データの総合的構築
Project/Area Number |
19200057
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
佐野 千絵 National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo, 保存修復科学センター・保存科学研究室, 室長 (40215885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木川 りか 東京文化財研究所, 保存修復科学センター・生物科学研究室, 室長 (40261119)
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Keywords | 微生物 / バイオリソース / 遺伝子 / 古墳壁画 / 劣化 |
Research Abstract |
高松塚古墳壁画の劣化要因微生物株の分離源として、2004年5月以降~本年度までに得られた資料、壁画面に発生したカビのコロニーやゲル状物質等の綿棒採取サンプル、主に石室解体に伴って得られた土壌、漆喰片、植物の根などについて、以下の調査研究を進めた。 1.公開菌株化のための調査研究:これまでに詳細同定を終えている保存菌株についての調査研究を進め、Penicillium paneumについて論文を作成、報告した。またその他の株についても順次、公的な微生物株保存機関への委託(公開)手続きを進めた。2.劣化要因菌の詳細同定:古墳から分離された主要な酵母の分離株に対して生理試験を進めた。もっとも高頻度で分離された種は、高松塚古墳・キトラ古墳ともに、土壌、昆虫、植物、下水などの自然環境からの分離報告例が多いPichia guilliermondiiであり、埋蔵中の土壌との微生物交換ルートが明確になった。3.劣化要因微生物の特性調査:古墳から分離された微生物株を用いて、有機酸産生能試験を行った。高松塚古墳からの微生物分離株では、Fusarium属分離株およびその近縁対照株で顕著な酢酸生成が認められた。次いでAcremonium属(Gliomastix節)分離株で比較的酢酸の生成が多く見られたが、Penicillium属、Trichoderma属などの分離株や保存株では酢酸の生成はほとんど認められなかった。総有機酸量と液体培地のpH低下量とは比較的相関が認められた。4.高松塚古墳目地漆喰に関する調査:石室目地で膠着剤として用いられた漆喰材料中の有機物について定量分析を進めた。また、ATP発光量から微生物汚染度を把握した。C, N, O同位体比を指標として有機物の移動や原材料把握などの調査を進めた。5.研究成果のすみやかな公開:以上の成果を順次、発表し、また論文にまとめて公開した。
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Research Products
(6 results)