2010 Fiscal Year Annual Research Report
高松塚古墳壁画劣化要因微生物の遺伝・表現形質等基礎データの総合的構築
Project/Area Number |
19200057
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
佐野 千絵 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター保存科学研究室, 室長 (40215885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木川 りか 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター・生物科学研究室, 室長 (40261119)
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Keywords | 微生物 / バイオリソース / 遺伝子 / 古墳壁画 / 劣化 |
Research Abstract |
最終年度である本年度は、これまでの検体からの分離・同定作業を順次進めるとともに、すでに分離・遺伝子配列解析による系統分類が行われた菌株の特性調査や同定のための諸作業を進めた。酵母では、既報の2種以外に新種の可能性のある分離株があり、これらの公開化のための研究をすすめている。細菌ではStenotrophomonas sp.(sp.nov.)において投稿準備をおこなっている。また、昨年度までの研究から新種の存在が確認できたGluconacetobactor spp.(5 spp.Nov.)について、発表原稿を投稿した。 これらの株は、順次、適した公的団体に寄託し、学術目的等で利用可能なように公開作業を進めている。 劣化要因微生物の栄養源に関する調査として、石室目地で膠着剤として用いられた漆喰材料中の有機物について、糖・脂肪酸、アミノ酸の定量分析を進めた。漆喰中には微生物が生育可能な栄養源が存在すること、西壁南寄りの目地などいくつかの場所で、有機物組成が他の目地とは異なっていることを明らかにした。また、ATP発光量から微生物汚染度を把握し、場所による微生物汚染程度に多少があることを明確にした。またC,N,O同位体比を指標として有機物の移動や原材料把握などの調査を進めた結果、有機物組成が他の目地と異なっている場所で14C年代で現代に近い値が得られ、変動幅が大きいことがわかった。 これらの成果について、順次公開、発表した。報文としては、高松塚古墳西壁女子群像の黒いシミの同定を進め、Acremonium tumulicola sp.nov.を含むいくつかのアクレモニウム属について同定した結果を国際誌で発表した。
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