Research Abstract |
シリコンの結晶異方性エッチングにおいて,これまでエッチングに寄与しないとされてきたアルカリ水溶液中のプラスイオンの効果を研究した.エッチング液中の銅イオンが,シリコンのエッチレートを低減し,同時に,面粗さを増大する現象をこれまでに当研究室が明らかにしたが,この1年間では,この現象が発生する物理化学的なメカニズムを研究した.日本・フィンランドの2国間共同研究の相手方であるヘルシンキ工科大グループによる第1原理計算の結果,シリコン結晶表面のステップ・テラス構造の特定位置で銅イオンが高い親和性をもつこと,また,これによってエッチングが進行しづらくなることが判った.さらに,銅イオンがシリコン表面にある凹凸の稜線と強い親和性があることから,ごく微量の銅イオンの存在がSi(110)の表面に発生するテーパ状のヒロックの発生の原因の一つになりうることを示した. ステップ・テラスモデルのもとづき,セルラ・オートマトンを利用したエッチング形状シミュレーションシステムを開発した. 従来,結晶異方性エッチングでは,凸型マスク先端で激しいアンダカットが発生し,一方,凹型マスク形状では応力集中が生じるような鋭い稜線を持つ特殊な形しかできないといわれてきたが,ある種の界面活性剤をエッチング液に添加することで,曲線プロフィルをもつエッチングマスクでは.これを反映した連続的な曲線エッチプロフィルが得られることを示した. 以上の内容を,学術誌論文8件,国際会議発表4件,著書1件で公表した.
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