2010 Fiscal Year Annual Research Report
インテグロン・ジーンカセットメタゲノム解析の基盤整備とその有効性評価
Project/Area Number |
19201041
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
丸山 明彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ付 (30202336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三谷 恭雄 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (10358103)
久留主 泰朗 茨城大学, 農学部, 教授 (60272118)
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Keywords | 微生物 / 遺伝子 / メタゲノム / 機能 / 特殊環境 / 汚染環境 / IODP / インテグロン |
Research Abstract |
微生物が保有するインテグロン・ジーンカセット(IGC)部位に着目し、多種多様な微生物が混在する環境微生物試料を対象とした効率的な機能遺伝子探索手法(IGCメタゲノム解析手法)として確立するための基盤整備を行う。これまで全く未解明な極限環境試料や汚染環境試料等を対象とし、このIGCシステムの普遍性や特徴、見出された機能遺伝子の特徴や生息環境との関連性、発現産物の特徴や有用性等の解明を通し、本手法の有効性や得られた結果の科学的意義、応用の可能性等について評価することを目的とした。 本年度は、前年度までの成果の公表を図るとともに、これまでIGC解析が全く行われていない北米沖のメタンハイドレート海域試料(海底下約120mに存在するメタンハイドレート層からIODP航海にて採取した掘削コア試料から抽出したDNA試料)を主な対象として解析を進めた。その結果、バクテリアとアーキアの双方で、既存種との相同性が低い(16S rRNA遺伝子で平均80%以下)クローンが多数見出され、新規微生物に富むことがわかった。種類的には、バクテリアではプロテオバクテリアのグループが、アーキアではメタンの生成や酸化に係ると考えられるグループが優占した。IGCシステムの中心的役割を担うインテグレース(Int)遺伝子の解析では、見出された34系統群の全てが新規と判明(他海域由来のものとの相同性は平均で66%)、海洋環境が新規intの宝庫であることが改めて示された。IGCシステム中のGC領域を対象にした解析では、疑似配列を除き53カセットの検出に成功、酸化還元関連酵素等に富んでいることが判明した。その中には、メタン生成や酸化に係る酵素(methyl coenzyme reductase M)や炭水化物分解酵素などが含まれていた。しかし、GC全体の多様性は、海底下メタンハイドレート層という特殊な環境特性を反映してか、上記Intの多様性に比べ限定的であった。この他、IGCシステムの全体配列を包含する約5kbのPCR断片が得られており、その構造と機能(各遺伝子の発現順位)の関係解明に取組んだ。また、これまでに見出したGC中の一部有用遺伝子を対象に機能発現実験に取組んだ。その結果、Nuclease様遺伝子では大腸菌発現が困難であったものの、Halogenase様遺伝子では目的蛋白質発現に成功、Toxin-Antitokin様遺伝子でも大腸菌内で機能することが確認され、それらの新規性や有用性の検討を進めた。以上のことから、このIGCメタゲノム解析手法は、広く自然環境微生物試料の解析に有効であり、従来の薬剤耐性遺伝子の動態解明のみでなく、微生物の適応・進化過程の解明や今後の環境微生物遺伝子利用にとっても大変有益であることが示された。
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