2007 Fiscal Year Annual Research Report
樹木の局所的な絶滅が景観レベルの種多様性に及ぼす影響の評価
Project/Area Number |
19201048
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
正木 隆 Forestry and Forest Products Research Institute, 森林植生研究領域, 室長 (60353851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中静 透 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (00281105)
星崎 和彦 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (30322655)
小南 陽亮 静岡大学, 教育学部, 教授 (30221980)
柴田 銃江 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, グループ長 (10343807)
永松 大 鳥取大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20353790)
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Keywords | 生物多様性保全 / 生態系修復・整備 / 生態学 / マトリクスモデル / 生活史パラメータ / 耐陰性 / アカシデ / ミズキ |
Research Abstract |
森林内の物理的・生物的な環境要因の測定を開始するとともに、種子、実生、稚樹、成木の成長・生死を観測し、次年度以降の調査基盤をすることを目的に研究をおこなった。また、これまでに長期観測得られたデータを解析し、本研究の大きな目標の一つであるモデルのプロトタイプを作成し、それに基づく解析をおこなった。モデルに用いた種として、耐陰性の比較的高いとされているアカシデと、逆に耐陰性の比較的低いとされているミズキの2種を選び、それぞれの生活史パラメータを、非撹乱林分のデータに基づいて比較した。具体的には、過去のデータを整理して生活史段階を当年生実生、実生、小稚樹、大稚樹、小若木、大若木、小成木、大成木の8段階に分け、それぞれの段階での滞留率、死亡率、次段階への移行率を計算して比較した。アカシデはどの段階においてもミズキよりも高い滞留率を示した。移行率については、ミズキは当年生実生〜実生の段階ではアカシデよりも高い値を示したが、小稚樹〜大稚樹の段階では逆となり、若木以上の毅階では、再びミズキが高い値を示した。ミズキなどの耐陰性の低いとされている樹木は、実生よりも稚樹の段階を抜けるのに撹乱を必要とすることが示唆される。死亡率を比較すると、実生など小さい段階ではアカシデの死亡率が高いが、稚樹や若木以降のステージではミズキの死亡率の方が高い。したがって、まだ完全に定着したとはいえない小さい段階での生活史特性は、必ずしも生活史全体を通じた耐陰性を反映するものではないと結論した。小林分での個体群動態をモデルで予測した結果、ミズキ個体群は数百年で局所的に絶滅したが、種子生産の多いアカシデは実生・稚樹バンクを形成し、絶滅までの時間がミズキに比べてはるかに長いことが示された。
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