Research Abstract |
2007年9月に渡仏し,継続して行っている仏国プロヴァンスに残されている美術品,文化財について理化学的解析を実施した。研究の主対象である,エクス=アン=プロヴァンスのサン=ソヴール大聖堂にある「燃える柴の祭壇画」は,現地での修復作業が進んでおり,板絵表面を洗浄した部分について,デジタル顕微鏡観察,撮影を行い,きわめて重要な知見を得た。 また,新たにサン=マクシマンのドメニコ会バシリカ聖堂内礼拝堂にある,同時代の大型聖人像板絵4点を,マルセーユ市のCICRPに移送し,修復のための予備調査を行った。仏国政府機関の研究者,管理者と協議し,予備調査の段取り,経費,役割分担について検討した。板絵は,かなり劣悪な保存状態であったため,表裏を詳細に観察したり,資料を採取するために動かすことも出来なかったため,限定された,調査,資料採取を行った。板絵の木材および,板絵を支える枠組み,背面の補強横桟などから,放射性炭素年代測定試料を採取した。また,板絵表面の顔料,裏面から元素分析用資料を採取し,詳細な写真撮影,さらに不十分ではあるが赤外線写真の撮影を行った。さらに,板絵部材の,表面処理にっいて検討するため,レプリカ法による表面情報を取得した。 持ち帰った資料について,これまでに,金色塗膜部分や肌色部分,イノシシの体部分について元素分析を行い,使用顔料を決定した。また,板絵の年代測定に関しては,板絵の部材によって,中心値で最大250年の差が存在することが判明し,現在詳細に解析している。 日仏共同「燃える柴」三連祭壇画修復委員会調査研究会議(仏国エクス,アン,プロヴァンス,2007年6月5日,第4回調査報告結果発表)で報告を行った。
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