2008 Fiscal Year Annual Research Report
中世末期プロヴァンス祭壇画に関する美術史学的知見の統合を促す科学解析の方法的研究
Project/Area Number |
19202006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西野 嘉章 The University of Tokyo, 総合研究博物館, 教授 (20172679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諏訪 元 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (50206596)
吉田 邦夫 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (10272527)
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Keywords | 文化財化学 / 年代測定 / 物性研究 / 製作技法 / 美術史 |
Research Abstract |
2008年9月末〜10月にイタリア、フランスで調査を行った。フィレンツェのウフィツィ美術館に収蔵されているニコラ・フロマン作『ラザロの甦生の祭壇画』について実見、可視光および赤外線画像を撮影し、これまで継続して調査・分析を行ってきたエクス=アン=プロヴァンスのサン=ソヴール大聖堂にある『燃える柴の祭壇画』(二コラ・フロマン)との比較、分析を行った。 また、仏マルセイユ市において、サン=マクシマンのドメニコ会バシリカ聖堂内礼拝堂から移送した、同時代の大型聖人像板絵4点について合同研究会議を開催し、調査を行った。板絵は、かなり劣悪な保存状態であったため、本プロジェクトの経費により板絵を補強し、マルセイユ超地域圏文化財保存修復センター(ClCRP)に可視光、赤外線、紫外線画像の撮影、透過X線像の撮影を依頼していた。仏国文化コミュニケーション省傘下のプロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域圏文化事業局(DRAC)、マルセイユ超地域圏文化財保存修復センター(ClCRP)、サン=マクシマン市および本プロジェクトチームが参加し、これらの情報、および年代測定、レプリカ法で得られた情報の解析、検討を行った。板絵に見られる描画面の修正状況が明らかにされ、さらに塗り込められた旧描画面を再現するなど、板絵が有する画像情報が総合的に分析、検討され、新しい知見を共有した。 一方、板絵の年代測定に関しては、板絵の部材によって、中心値で最大250年の差が存在することが判明したため、今回の調査で新たな資料を採取し、4点の板絵の制作年代、板絵の修復状況を時間情報を用いて解析し、4点の板絵が構成された美術的、宗教的背景を検討する計画であった。ところが、年代測定に使用している本学のAMS装置が設置されている建屋の耐震補強工事が行われ、昨秋以降AMS装置が運転休止の状態にあったため、測定は未了である。2009年度早々に測定を行う予定である。また、板材の加工についての情報を得るために、レプリカ法を実施した。 さらに、長期にわたり修復を行ってきたサン=ソヴール大聖堂『燃える柴』の現状を視察した。
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