Research Abstract |
昨年に引き続き、中国浙江省嘉興市を対象とした、水質改善のための動学的環境政策シミュレーションを実施した。主たる分析視点は、水質汚濁排出削減と地域経済成長とのトレードオフの関係を見極めることと、新規バイオマスプラントの設置がこのトレードオフ関係に与える改善効果を明らかにすることである。ケース15-10%(バイオマスプラントの導入なしで嘉興市の現行の環境政策を実施して,2016年の汚濁物質排出量を各々2006年水準より15%以上削減し,かつすべての産業の生産額を2006年水準のマイナス10%水準以上を維持しなければならないケース)では農業を中心としてGRPの成長を大きく犠牲にする必要があること、一方、ケース15-10%-BP(同様に汚濁物質の削減および生産額の維持を,バイオマスプラントを導入して行わなければならないケース)では,すなわち本研究で提案する環境政策を実施する場合には10-15%汚濁物質削減目標の達或とGRPの成長の確保は両立するということを明らかにした。さらに,これらの二つのケースについ10年間のGRPの合計を比較すると,1,720億元の差が生じた。バイオマスプラントは,10年間で5,705機が設置され,その設置コストは394億元,維持管理費は226億元,10年間の合計で620億元のコストが必要であるので,本研究で提案する環境政策を実施すると,その実施コストの3倍近い経済的な効果(これは社会的便益の一部ではあるが,水環境の環境改善やGHG削減の評価額は入っていない)が地域経済全体で得られることが明らかになった。 畜産廃棄物は,水質汚濁発生源であるばかりでなく,不適切な処理によりメタン,亜酸化窒素等のGHGの排出源ともなり得る。この意味で,当該バイオマスプラントはGHGの削減にも貢献できる。バイオマスプラントを5,705機設置することにより,10年間でCO_2重量換算温室効果ガスを約9,250千t-CO_2削減できることを明らかにした。これは,仮に国際排出権取引価格を100元/t-CO_2としても,約9億元の価値を持っていることを明らかにした。 事業モデルについては、中国吉林市の行政担当者、吉林大学と低炭素社会構築に貢献するバイオマスエネルギー変換技術について、共同研究を検討している。来年度は、とれについての事前評価を実施する予定である。
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