Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松島 茂 法政大学, 経営学部, 教授 (00339508)
福田 淳児 法政大学, 経営学部, 教授 (50248275)
近能 善範 法政大学, 経営学部, 准教授 (10345275)
天野 倫文 東京大学, 経済学部, 准教授 (40339205)
行本 勢基 早稲田大学, アジア太平洋研究センター, 助手 (10434367)
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Research Abstract |
イノベーションを起動するメカニズムとしてクラスターの機能を研究した。日本および海外におけるクラスター創生事業に着目し,その国際比較を行うとともに,理論的・実証的な研究を進めた。日本国内では,文部科学省の主導する「知的クラスター創成事業」を研究の対象として,日本の産学官連携の実態を調査した。国際比較では,フィンランド,ドイツ,フランス,EU,日本をとりあげて,クラスター創生政策の比較と,イノベーション政策の比較を行った。国際比較の結果,各国ともに危機感をばねとした巨額研究開発資金の導入が進んでおり,そのコーディネーションに課題があることが明確になった。同様の課題は,日本国内のコーディネーターに対するアンケート調査からも明らかになった。 理論研究の分野では,二つの大きな進展があった。第一は,ネットワーク状に連結されたクールノー競争モデルをコンピューター上にシミュレートすることによって,知識共有の意味で協力しながら,市場間での競争を行うモデルを分析した。フリースケール・ネットワークの形状に結ばれた市場で競争するクールノー企業は,大きな不均衡を生み出し,そのなかのハブに該当する市場がクラスターの中心に位置することが明らかになった。単純なハブ・アンド・スポークの形状では,クラスターが生まれないことも同時に明らかにできた。 理論研究の第二の分野は,集合知に関する研究である。集合知とは,複数の主体によって形成される知識であるが,その形成は集合戦略のあり方によって規定されている,とみなすことができる。接合的集合戦略によって生み出される集合知を共生知と呼ぶことができ,多様かつ異質な能力の接合によって,新たな知が生み出されること,また,その多様性はイノベーションの起点として機能することを明らかにした。これは,知識管理論における暗黙知と形式知という二分法を超えた新たな視点を提出したものであり,富山県のクラスター創成事業を事例として実証研究が進められた。
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