2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19204031
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小宮山 進 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (00153677)
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Keywords | 量子ホール系 / 核スピン / 位相制御 / 端状態 / 量子ホール遷移 |
Research Abstract |
核スピン偏極の生成が端状態閉じ込めポテンシャルが緩やかになるにつれ消失するという既研究の知見を元に,ランダウ準位占有指数を2の上下にずらすことによって生ずる核スピン偏極の大きさと空間プロファイルの変化を観察した。またサイドゲ-トバイアスの制御によってポテンシャル形状を糸統的に変化させて同様の観察を行った。さらに,動的核スピン偏極の生成に伴って核スピン系と電子スピン系の間の相互作用が有効的に強まり,核スピン偏極の電子スピンへの緩和が超放射として起こる可能性がある。その効果を検証するための実験を行った。つまり,従来のクロスゲート法で電子スピンの非平衡分布によつて核スピン偏極をサイドゲートに沿って生成する。核スピン偏極が生成する領域にゲートバイアス電圧のパルス的印加によって量子ポイントコンタクトをパルス的に生成し,その伝導度によってポテンシル鞍点での核スピン偏極を局所的に検出する。その際,ポテンシャル鞍点領域の核スピンをパルスNMRによって特定のユニタリー変換を行うにとにより,電子スピン系への超放射が起こる(縦緩和時間が桁違いに短くなる等)ことを観測しようとした。平成19年度は,この測定のための試料を作成して準備的な実験を行つた。つまり,クロスゲート,サイドゲート,ポイントコンタクト用のゲートを持つGaAs/AlGaAsヘテロ構造素子を用意し,その上にSiO層による絶縁膜を蒸着したうえでパルスNMR用のローカルコイル(ポイントコンタクト直上位置に金属細線)を作成した。実験では,クロスゲートによってサイドゲートに沿う核スピン偏極が生成することを電流電圧特性のヒステリシスから確かめた。続いて,パルス駆動によるポイントコンタクトによる検出を試みたが,感度がまだ十分でなく検出にはいたらなかった。また,試料作成に関しては,ポイントコンタクト領域の直上に蒸着によってSiO層を形成すると,ポイントコンタクトのトンネル電流特性が大きく影響を受けることが判明した。今後,絶縁層の作成方法に改良を加えて実験を進める。 量子ホール電子系の遷移の試料サイズ依存性に関して,乱雑ポテンシャルの異なる試料を数種類の結晶waferから作成し,かつ試料サイズ(ゲート領域サイズ)を大きく変化して実験を行った。多くの2次元電子系において,遷移幅の温度依存性が従来研究の結果と異なること,また低温域で温度依存性が消失するが系統的な試料サイズ依存性は無いことを見出した。測定により,これらの結果が2次元電子系試料の乱雑ポテンシャルの特徴的距離と試料サイズとの兼ね合いから起こるメソスコピック効果であることを確かなものにすることができた。
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Research Products
(3 results)