2008 Fiscal Year Annual Research Report
新規な非線形分光計測による新しい界面分子科学の開拓
Project/Area Number |
19205005
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田原 太平 The Institute of Physical and Chemical Research, 田原分子分光研究室, 主任研究員 (60217164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 祥一 独立行政法人理化学研究所, 田原分子分光研究室, 専任研究員 (60250239)
石井 邦彦 独立行政法人理化学研究所, 田原分子分光研究室, 研究員 (80391853)
渡邉 秀和 独立行政法人理化学研究所, 田原分子分光研究室, 協力研究員 (80301787)
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Keywords | 非線形分光 / 界面 / フェムト秒 / 超高速分光 / ラマン分光 / 電子スペクトル / 水素結合 / 先端分光計測 |
Research Abstract |
われわれは新しい界面選択的な非線形分光を開発して研究を行っている。これまでに界面分子の電子状態に対する新しい分光法として,溶液の吸収スペクトルに匹敵する質で界面分子の電子スペクトルを測定できるマルチプレクス電子和周波(ESFG)分光を開発した。まず、このESFG法を用いて気液界面に吸着したタンパク質シトクロムCの電子スペクトルを測定した。シトクロムCのSoretバンドのピーク波長は,タンパク質の構造を鋭敏に反映することが知られている。空気/水界面のシトクロムCのESFGスペクトルは非常にバンド幅が広く,native状態と変性状態のスペクトルを重ね合わせたような形状であった。このことは,気液界面には,折り畳まれたnativeな構造と変性してほどけた構造が混在していることを示している。ESFGによって,タンパク質の表面変性という基本現象に関する新しい知見が得られた。ESFG法では新しい波長に発生する信号光の強度を測定するため(ホモダイン検出),二次の非線形感受率の自乗|χ^<(2)>|^2を観測しており、分光信号に含まれる分子の情報を完全には得ていない。そこで、光学配置をタンデムに拡張し、ESFGのヘテロダイン検出(HD-ESFG)を実現した。このHD-ESFG法の開発によって,約100nmというきわめて広い波長範囲で一度にχ^<(2)>スペクトルの実部と虚部を測定可能になった。HD-ESFGを用いて空気/ガラス界面のp-ニトロアニリン(PNA)とN,N'-ジエチル-p-ニトロアニリン(DEPNA)のχ^<(2)>スペクトル測定を行ったところ、χ^<(2)>の虚部のスペクトルが逆の符号をもって現れることがわかった。これによって、PNAとDEPNAのように似た構造をもつ分子でも,ファインな化学修飾によって界面における分子配向が逆転することが分光学的に直接的に示された。
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Research Products
(17 results)