2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19205012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 誠 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (90209065)
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Keywords | 自己組織化 / ナノ空間 / 反応制御 / パラジウム / 光反応 |
Research Abstract |
本研究では、自己組織化中空錯体の疎水内部空間を反応場とする新規かつ特異的な反応の創出に取り組んだ。研究は、(1)新たな中空錯体の自己組織化構築、(2)自己組織化空間を利用した通常では進行しない新規反応の探索、(3)自己組織化空間の触媒的活用、(4)通常の条件下では合成・単離不可能な不安定化合物の合成と解析の4項目に従って遂行した。以下、各項目の研究において得られた成果を記載する。 (1)新たな中空錯体の自己組織化構築 M_<12>L_<24>球状錯体を構成する配位子の折れ曲がり角度をさらに広げることで、M_<24>L_<48>球状錯体の構築に成功した。質量分析の条件を最適化し、単一成分のM_<24>L_<48>球状錯体の構築を確認した。結晶化に適した配位子をデザインすることで初めてM_<24>L_<48>球状錯体の単結晶を作成することにも成功した。予備的な解析において、直径5nmの一義的な球状錯体が構築されていることをX線結晶構造解析からも証明した。 (2)自己組織化空間を利用した通常では進行しない新規反応の探索 ナフタレンは非常に安定な芳香族化合物であり、通常の条件下ではペリ環状反応を起こすのは難しい。しかし、かご状錯体内に包接させることで、熱・光どちらに対しても反応性を示した。アルキル鎖が置換したナフタレンは、アルキル鎖の長さを調節することでナフタレンのDiels-Alder反応が効率よく進行した。反応に関する熱力学パラメータを算出することで、かご状錯体が反応エントロピーの減少を抑制していることを証明した。 (3)自己組織化空間の触媒的活用 アセナフチレンの光二量化反応は、M_6L_4かご状錯体内では立体選択的に進行する。加熱しながら光照射することで、ゲスト分子の交換速度が速くなり、光反応が触媒的に進行することを見出した。 (4)通常の条件下では合成・単離不可能な不安定化合物の合成と解析 ヘミアミナールはアルデヒドからのイミン生成における不安定な正四面体中間体であり、その単離および構造解析は困難である。細孔性ネットワーク錯体の細孔内で反応を行うことで、ヘミアミナールの直接観察に成功した。細孔性ネットワーク錯体は「結晶性フラスコ」としてみなすことができ、グリニャール試薬のような有機金属試薬を用いた反応の活性中間体の直接観察にも展開できることを明らかにした。
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Research Products
(16 results)