2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19205013
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 正浩 Kyoto University, 工学研究科, 教授 (20174279)
|
Keywords | 炭素-炭素結合切断 / 炭素-炭素結合形成 / 遷移金属触媒 / 白金 / 多環芳香族炭化水素 / アズレン / 不活性結合活性化 / 環化異性化反応 |
Research Abstract |
従来、化学的に不活性とされてきた炭素-炭素結合を切断し、新たな炭素-炭素結合形成に用いることは極めて困難な課題である。しかし、これが実現されれば革新的な合成法として大きなインパクトを与えることが期待される。本研究では遷移金属触媒を用いることでこの実現を目指した。検討の結果、2,2'-ジアルキニルビフェニルに対し、二価の白金錯体触媒を作用させたところ、ベンゼン環の開裂を伴った新しいタイプの環化異性化反応が進行し、5員環と7員環が縮環した芳香族化合物であるアズレン誘導体が得られることを見いだした。想定される反応機構は以下の通りである。まず、白金触媒がアルキン部位を求電子的に活性化し、もう一方のアルキン部位と6-エキソ環化する。続いて生じたビニルカチオンにベンゼン環イプソ位の炭素が付加し、さらに白金の結合した炭素が生成したカチオンに付加することでビシクロ[3.1.0]ヘプタジエン中間体が生じる。続いてこの三員環部位の開環を伴う3.3-シグマトロピー転位を経て進行しているものと考えられる。本反応は反応機構的に極めて興味深いだけでなく、生成物も有用であることが期待される。すなわちアズレンは構造異性体であるナフタレンと比較して狭いバンドギャップや双極子モーメントを有する多環芳香族炭化水素(Polycyclic Aromatic Hydrocarbon, PAH)であり、有機電子材料の開発など様々な応用が期待される。
|