Research Abstract |
本年度は,精細かつ高選択的なin vivoがんイメージングを実現すべく,酸性環境を認識して初めて蛍光性となるpH蛍光プローブを設計,開発し,これをがん細胞表面受容体に結合してエンドサイトーシス経路で迅速に取り込まれる抗体と組み合わせたプローブの開発を行った。具体的には,BODIPYを蛍光団,各種アニリン部位をプロトン結合部位とする蛍光プローブを開発した。本プローブは中性環境下では分子内光誘起電子移動により消光しているが,弱酸性環境下に置かれると強い蛍光を発することがin vitroの実験で確認された。次にこのプローブを,代表的ながん細胞表面受容体であるHER2に対する抗体(Herceptin)にアミド結合を介して導入し,がん細胞にエンドサイトーシスで取り込まれ,後期エンドソームやライソゾームなどの酸性オルガネラに輸送されて初めて蛍光を発するがんイメージングプローブを開発した。まず本プローブをHER2発現培養がん細胞系に適用し,確かにがん細胞に取り込まれて初めて蛍光を発することを確認した。続いて,肺がんモデルマウスの尾静脈からこのプローブを導入し,1日後に開腹して,本年度予算で購入した蛍光スペクトルイメージャーを用いて肺を観察した。その結果,がん部位のみが強い蛍光を発し,それ以外の部分からのバックグラウンド蛍光は極めて低く,高いS/N比でのがんイメージングが可能であることが示された。コントロールとして常に光る蛍光団を結合させた抗体を用いて同様の実験を行ったところ,正常部位や血管内に分散しているプローブに由来する蛍光も強く,高選択的ながんイメージングは不可能であった。以上のように,蛍光プローブ小分子とがんターゲッティング大分子を適切に組み合わせることで,極めて高選択的ながん蛍光イメージング系を確立することに成功した。
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