2007 Fiscal Year Annual Research Report
固体表面・サブ表面・バルクにおける水素の量子状態の解明
Project/Area Number |
19206007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
笠井 秀明 Osaka University, 大学院・工学研究科, 教授 (00177354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 達雄 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (60011219)
福谷 克之 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (10228900)
中西 寛 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40237326)
大中 幸三郎 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (60127199)
八木 厚志 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70116119)
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Keywords | 水素 / 表面・界面物性 / 放射線・X線・粒子線 / 計算物理 / 物性実験 / 共鳴核反応法 / 拡散 / 水素吸着 |
Research Abstract |
表面領域からサブ表面領域にわたる水素の量子状態を探る第一原理量子ダイナミクス計算手法を発展させ、Pd(111)表面系へ応用を試みた。この場合、水素原子の表面吸着サイトは、fccホローサイトであった。この吸着状態から、縦振動の励起状態までの励起エネルギーを計算したところ134meVであった。HREELSによる実験結果は、124meVであったので実験との一致は極めて良い。この表面fccホローサイトから内部への拡散経路として、Pd第一層と第二層間の正八面体サイト(1^<st>OH)、次に第二層と第三層間の正四面体サイト(2^<nd>TH)を通過する経路が見出された。この経路は幅が狭いため、量子論による活性化障壁は古典論によるものより大きく、また、同位体効果も大きい。たとえば、表面fccホローサイトからPd第一層と第二層間の1^<st>OHへは、第一原理電子状態計算によるポテンシャル障壁の579meVに対し、第一原理量子ダイナミクス計算手法では、軽水素原子で598meV、重水素原子で646meVであった。 拡散過程の時間発展シミュレーションのプロトタイプも完成し、上記系に適応した結果、先の量子論的活性化障壁に対応するエネルギーをもち、始状態で表面に局在していた水素原子の波束は、10^<-13>秒で、Pd第一層と第二層間の1^<st>OHへ達することが見出された。表面第一層Pd原子の格子振動の周期は2.54×10^<-13>秒で、それより短い時間で表面を通過することが見出された。来年度以後、表面緩和が水素拡散現象にどのように影響してくるのかを解析していく予定である。実験グループでは、核反応を用いて水素の運動量分布を求めるための試料ホルダーの準備を行い、さらにPdナノ構造中への水素吸収拾性を調べるための試料準備を進めた。前者では、クライオスタットと試料マニピュレータを、また後者では、基盤試料、Pd蒸着源、斜入射条件の探索を行った。来年度の実験設備導入により理論研究と統合発展させることで表面、サブ表面、バルクにおける水素量子状態の解明を進めてゆく。
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Research Products
(26 results)