Research Abstract |
アルコールCVD法などによる単層カーボンナノチューブの垂直配向膜合成においては, CVD温度, ガス圧力, ガス流量への依存性が複雑に関連する. 膜厚と吸光度が比例することから, レーザー光の吸収を測定することでCVD中にリアルタイムでの膜厚測定を行う技術を用いて反応の現象論的なモデル化を進めた. 触媒におけるナノチューブ合成初期反応速度はガス圧力が低圧の場合には, 圧力に比例し, 一次反応であることが分かった. また, CVDの進行と共に触媒の活性が失われ, 反応速度が指数関数的に減少する. ところが, ガス流量が小さい場合にはCVDの進行にともなって反応速度が増大するような特異な現象が現れる. エタノールの分解反応モデルを用いたCFDなどの予測も加えて, エタノールの気相での熱分解の影響が大きいことが明らかとなった. とくに, エチレンやアセチレンなどの熱分解生成物の反応速度が大きく, エタノールガス中にこれらを微量に添加することで合成速度の急激な上昇なども確認された. 一方で, これらの反応速度の速い炭素源を用いると合成される単層カーボンナノチューブの質の低下がみられる. ナノチューブは擬一次元構造を有することで, 多次元物質に比べフォノン散乱が弱く, 又炭素の強い共有結合による高いフォノン群速度により, その熱伝導率は非常に高いことが期待される. そこで, 垂直配向単層カーボンナノチューブ膜の熱伝導率について, 薄膜3ω法によって測定を行った. 金属薄膜を垂直配向単層カーボンナノチューブ膜に直接蒸着をすることによって電極として, 様々な膜圧のサンプルについての測定を行った. 基板とカーボンナノチューブ膜との間の界面熱抵抗が大きく, 測定精度のさらなる向上が必要ではあるが, 予想に反してカーボンナノチューブ1本あたりの熱伝導率は100W/mK程度以下の小さなものとなった. ナノチューブ複合材料のモデル計算なども進めてこの原因を検討中である.
|