Research Abstract |
銅多結晶の平滑試験片を用意し繰り返し硬化させた後,Center Cracked Tensile (CCT)試験片へと加工し,疲労き裂伝ぱ試験を行った.破断した試料の破面は,電気めっきにより銅めっきを施し保護した.その後試料表面を研磨し,ECCI法を用いて破面近傍の微細構造を観察した.ECCI観察はJEOL JSM-6500F SEMを用い,加速電圧15kVの条件で行った.観察の結果,疲労き裂近傍の転位構造は破面からの距離に依存しており,破面からの距離が小さい順に,セル構造,セル+ベイン+PSB構造,ベイン+PSB構造が形成されていた.セル構造を含む領域の大きさは,切欠きからの距離が大きくなるにしたがって増加していた.また,切欠きから十分に離れた領域では,PSB構造は観察されなかった.いくつかのき裂長さに対して,セル構造が分布する領域の大きさを測定した。△K_1値の増加にともなってセル構造領域の大きさが増加し,その関係はべき乗関数によって近似することができた.さらに,破面直下に形成された転位セル構造の粒径を測定した.△K_1値の増加にともなってセルの直径が減少し,ほぼ△K_1値の平方根の逆数に比例していた.このような△K_1値と内部組織との対応関係を利用すると,逆問題の一種として内部組織から△K_1値を推定することができる.破断した平滑試験片の表面層を研磨によって除去した後にECCI法によって微細構造を観察するという作業を繰り返すことで,破面に沿ったセル構造領域の大きさを測定した.CCT試験片での疲労き裂伝ぱ試験で得られた関係式に,平滑試験片で測定した値を代入し,△K_1値の等高線図を得た.等高線図から予測される伝ぱ方向は破面のSEM観察と一致した.セル直径の測定でもほぼ同様な△K_1値の分布が得られた.
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