Research Abstract |
1.物質探索:昨年度の研究により,ナノサイズの粒子径を有する蛍石型酸化物における粒界プロトン伝導現象と1次元キャピラリを有するLa-Ge系アパタイト型化合物,大プロトン濃度を有するBaReO_2(OH)を発見した.今年度はこれらの物性と合成の最適化をさらに精密に調べることを目的として以下の実験を行った. 2.合成方法(1)物理的方法:昨年度導入したRFスパッタ装置を用い,プロトン伝導性酸化物薄膜の低温合成をPtを含むGDC(Ce_<1-x>Gd_xO_<2-x/2>)について検討した.装置の制約等から,主にナノ粒子の非晶質あるいは微結晶への水溶(水酸化物化)を利用する間接合成法を対象として,薄膜ナノ粒子酸化物を合成し,還元により大量の酸素空孔を導入してプロトン溶解を容易にする方法を検討したが,粒界のイオン伝導の挙動が大きく変化した.また通常のRFスパッタ法で薄膜形成を行い,成膜時の雰囲気と基板温度,ならびに水和反応・結晶化反応の条件について検討した.(2)化学的方法:金属アルコキシド法を利用し,(1)ナノ粉末合成と常温高圧プレスによるナノ粒子バルク体合成と(2)スピンコート膜の低温合成の検討を行った. 3.結果:ナノ粒子ジルコニアならびにセリアについて大きな成果が得られた.高温FT-IR,熱放出スペクトル測定装置,^1H^+-MAS NMR測定,ならびに交流インピーダンス測定により,高密度に粒界層を含むナノ粒子バルク体の水吸着,プロトン欠陥濃度とその種類,電気伝導度に現れる同位体効果を調べ,表面には大別して(1)終端-OH^-,(2)-OH^-と水素結合した第1層の水,(3)水素結合した水の上に弱い水素結合で吸着した自由水,という3種類の異なる環境にあるプロトンが存在することがわかった.また,高温では水素結合を利用したプロトンホッピング(Grotthus機構),60℃以下では自由水中のH_3O^+によるVehcle機構によると結論した.
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