2007 Fiscal Year Annual Research Report
海上輸送構造体信頼性確立のためのマルチスケール評価技術の研究
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19206091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
粟飯原 周二 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (10373599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 淳 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (10222085)
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Keywords | 船体構造 / 破壊力学 / き裂伝播 / 溶接 / マルチスケール / 多結晶体 / へき開破壊 |
Research Abstract |
(1)多結晶体き裂伝播モデルの開発:海上輸送体構造物を構成する鉄鋼材料は多結晶体であり,結晶のへき開によるき裂伝播を再現するシミュレーションモデルを開発し完成した。本モデルは,結晶方位のランダム性を考慮して結晶粒ごとにき裂の伝播方向が異なることを考慮したもので,現実の鋼におけるミクロき裂伝播挙動を忠実に再現することができる。本モデルにより,結晶粒が微細化するほど結晶粒界における遅延効果が大きくなり,き裂伝播抵抗が大きくなることがモデルから推測された。実際の鋼の高速破壊試験を実施して破壊面を電子顕微鏡で測定し,モデルとの比較を行ったところ,シミュレーションによって得られる破面形態は実験結果と極めて良好な対応があることが確認できた。 (2)溶接部材き裂伝播モデルの開発:海上輸送体構造物は溶接によって組み立てられるが,溶接部には靭性の不均一性と残留応力が存在する。本研究で,これら因子を考慮したき裂伝播モデルを新たに開発した。その結果,溶接熱影響部における靭性の谷間と残留応力の強さによってき裂の伝播経路を予測できるようになった。構造体のき裂伝播経路と,溶接部,母鋼板に必要とされるき裂伝播抵抗値の設定に威力を発揮するものと考えている。 (3)構造体き裂伝播モデルの開発:構造体中のへき開き裂伝播速度は1,000m/s以上の速度となることがあり,構造体の信頼性を確保するためには,高速き裂伝播に対する鋼の抵抗値を測定することが必要である。今年度は,かかる高速き裂伝播挙動の有限要素法解析を開始した。有限要素法を用いた動的解析を実施し,高速き裂伝播に伴うき裂先端の応力場やエネルギー損失が解析解と一致することを確認した。 以上のとおり,ミクロおよびマクロレベルにおける高速き裂伝播挙動に関する研究を当初計画よりも先行して実施した。来年度は構造体の信頼評価を可能とするレベルに拡張する。
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Research Products
(5 results)