2008 Fiscal Year Annual Research Report
海上輸送構造体信頼性確立のためのマルチスケール評価技術の研究
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19206091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
粟飯原 周二 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (10373599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉成 仁志 東京大学, 海上技術安全研究所, 上席研究院 (20167737)
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Keywords | 海上輸送 / 船舶工学 / 材料工学 / 脆制破壊 / 破壊力学 / マルチスケール解析 / 鋼 |
Research Abstract |
我が国の海外との物資輸送の99.7%を担う海上物流を安全に行うことは我が国経済維持発展にとって極めて重要である。最近のコンテナ船の大型化に伴い、船体の構造強度、特に、脆性き裂の高速伝播による船体の大規模損傷の防止が喫緊の課題となっている。本研究は上記目的に鑑み、高速脆性き裂伝播の現象をマルチスケール解析するものである。 昨年度開発した多結晶体き裂伝播モデルを応用し、鋼において脆性き裂が停止する状況を結晶粒レベルで解析した。き裂停止直前ではき裂伝播時とは異なったき裂伝播経路を示すこと、き裂前縁で不連続的にき裂停止が起きて全体のき裂停止をもたらすことがモデルから推定され、き裂停止実験サンプルの電子顕微鏡観察結果と一致した。さらに、結晶方位異方性によるき裂伝播方向の傾斜や捩れの状況とき裂伝播抵抗値の方向依存性の実験結果を本モデルで初めて説明できた。ミクロレベルでのき裂伝播と停止の機構が明確となった。 一方、マクロレベルの解析では、昨年度開発した溶接部き裂伝播モデルを実際の船体構造溶接継手に適用して解析を行った。脆性き裂伝播経路を溶接部から逸脱させてき裂を停止させるために必要な負荷応力・靭性分布・継手間距離等のパラメータをモデルから推定することが可能となり、船体の溶接継手設計に応用できた。 実船体では脆性き裂が数メートル以上に亘って伝播することがある。このような長大き裂を停止させるための条件を明確化するために、船体を模擬した大型試験体について動的有限要素法によるき裂伝播解析を実施した。き裂伝播に伴い応力拡大係数が上昇してもき裂が停止する場合があることや、構造端部における応力波反射によるき裂停止挙動などを定量的に評価できるようになった。 上記のとおり、マルチスケール解析により脆性き裂の動的伝播と停止の機構の多くが解明され、一部は実船の安全性評価基準へも適用することができた。
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