Research Abstract |
東日本に分布する内湾性海成性堆積物について,竜の口層を中心として,秋田-青森地域から船川層およびその相当層,山形地域からは手ノ子層,中畑層,福島(会津)地域からは和泉層を対象とした.さらにこれらの地層に加えて玉川温泉などから排出される重金属類の挙動,さらに秋田県小坂川をモデルとして重金属類のバックグラウンドと人為的汚染の仕分けの計算アルゴリズムの開発を行った.分析は,蛍光X線分析,環境省告示第18,19号に則った水溶出試験とHCl溶出試験を行い,さらに溶出溶媒を変えることにより重金属類の存在形態についての検討を行った. 秋田県の代表的鉱山地帯である北鹿地域の小坂川流域をモデルとした,自然由来と人為由来の重金属類の寄与率を推定する計算アルゴリズムの開発では,下流河川の流量(米代川)をもとに上流部の各支流の流域面積から,各支流の流量を推定し,さらに休廃止鉱山,製錬所の重金属排出データ,各流域に分布する地質とそこの岩石からの重金属溶出量を考慮して,河川中の重金属類を自然由来と人為由来の寄与率を明らかにした.この結果,岩石からの重金属類の溶出量にある係数をかけることにより,河川中の重金属類の濃度と寄与率を説明することが可能であるが,係数の値は,流量により変化することから,各支流の流量を如何に正確に推定することができるかが,計算の精度を決めることがわかった. 東北地方に分布する内湾性海成堆積物の分布域では,自然由来の重金属濃度が高くなる.これに人為汚染が加わることによって,さらに環境への影響が懸念されるが,重金属類の自然由来と人為由来を区別する計算アルゴリズムと実データによる検証を行い,充分な精度の結果を得ることができた.今後他地域への適用を試みたい.
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