2008 Fiscal Year Annual Research Report
地球・地域環境変化と生物進化 : ミジンコ休眠卵を用いた分子古生物学的解析
Project/Area Number |
19207003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
占部 城太郎 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 教授 (50250163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河田 雅圭 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (90204734)
横山 潤 山形大学, 理学部, 准教授 (80272011)
上田 眞吾 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (40318390)
小田 寛貴 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 助教 (30293690)
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Keywords | 古陸水学 / 植物プランクトン / 動物プランクトン / 湖 / 堆積物 / 休眠卵 / カロチノイド / 環境変動 |
Research Abstract |
高山湖沼は集水域に恒常的な人間活動は無く、平地湖沼のような集水域レベルの人為的な影響は極めて少ない。従って、広域的な環境変化に対する生物群集の応答を明らかにするためには、高山湖沼が適していると考えられる。しかも、高山湖沼は環境変化の影響を受けやすい脆弱な生態系として、その生態系変化が懸念されている。しかし、我が国の高山湖沼の生態系が大気降下物など広域的な環境変化によってどのような影響を受けているのかは全く判っていない。そこで、本研究は高山湖沼の生物群集への広域的な環境変化に対する影響を明らかにすることを目的として、八幡平国立公園内にある森林に囲まれた蓬莱沼と山頂に位置する八幡沼を対象に, 堆積物に保存されている植物プランクトン由来のカロチノイド色素と動物プランクトン遺骸を調べ、過去300年にわたる動植物プランクトン群集の長期的な変動を復元した。 分析の結果、八幡平高山湖沼の蓬莱沼では1950年以降、環境条件を指標する全窒素・全リンの増加に伴い、植物プランクトンも増加、この餌資源の増加、ボトムアップ的効果によりDaphniaも大幅に増加していることが判明した。蓬莱沼では、集水域レベルでの人為的影響がないことから、全窒素・全リンの増加は、大気降下物に由来するものと推測された。一方、八幡沼では1950年以降、全窒素は増加するが、全リンは増加していないことが判明した。植物プランクトンは全窒素の増加に伴い、僅かに増加するが、リンは増加せず、Daphniaも増加しないことが明らかとなった。これは、八幡沼は蓬莱沼と比べpHが低いことから、八幡沼では集水域の土壌が酸性的で大気降下リンを吸着させ、藻類やDaphniaの生産を制限している可能性が推測された。つまり、局所的な人為的影響(集水域の人間活動)がない高山湖沼でも、1950年以後、栄養状態や動植物プランクトン群集に変化が認められ、広域的な環境変化である大気降下物によって富栄養化が促進したと推測された。但し影響の大きさは近接する湖沼(蓬莱沼・八幡沼)で異なっていることから、広域的な環境要因の影響は集水域の植生や土壌特性に依存していることが示唆された。
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Research Products
(6 results)