2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞システムにおける反応ゆらぎの計測とその特性・役割の理解
Project/Area Number |
19207012
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐甲 靖志 The Institute of Physical and Chemical Research, 佐甲細胞情報研究室, 主任研究員 (20215700)
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Keywords | 1分子計測 / 顕微計測 / ノイズ / 細胞内情報処理 / 細胞分化 / 細胞増殖 |
Research Abstract |
本研究は、EGF-Ras-MAPK回路の細胞内情報伝達反応を題材として、蛋白質分子反応、細胞内分子システム、細胞応答の各階層において反応ゆらぎとその伝搬・加工の実測と、その性質と役割の解明を目的とする。分子反応においてはEGF受容体とRasの反応、分子システムレベルでは、EGF受容体-Rasの反応回路と、Rasの下流に位置するMAPKカスケード、細胞レベルでは、EGFに対する細胞変形・運動、増殖応答を研究対象としている。本年度、分子反応計測においては、昨年作成した分子ダイナミクス計測装置とデータ解析法の実証実験を行い、1分子蛍光発光の状態変化をサブミリ秒の時間分解能で検出と、細胞内蛍光蛋白質の1分子検出に成功した。反応記憶が予想されているEGF受容体の分子認識反応に重要な細胞質部位の構造ゆらぎを実測するためのプローブ導入用分子の精製系を樹立した。情報伝達分子システムにおいては、Raf(MAPKKK)の断片や変異体の細胞内1分子反応計測により、Ras,Rafおよび細胞膜の未知のリン酸化酵素3者の複合体によるRaf活性化経路の反応キネティクスモデルの精密化を行った。また、ERK(MAPK)の活性化反応の再構成系を改良し、蛋白質濃度の制御を可能にして過剰応答性の解析を開始した。細胞レベルでは、細胞培養条件とEGF,NGF,H_2O_2依存的な細胞応答(増殖・分化・細胞死)の対応関係を集団計測し、細胞運命決定の確率性と細胞外環境・外来信号による確率変動を計測した。細胞応答と分子反応(ERKの活性化)を同時計測する顕微鏡装置を組み立てた。
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