2010 Fiscal Year Annual Research Report
細胞システムにおける反応ゆらぎの計測とその特性・役割の理解
Project/Area Number |
19207012
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐甲 靖志 独立行政法人理化学研究所, 佐甲細胞情報研究室, 主任研究員 (20215700)
|
Keywords | 1分子計測 / 顕微計測 / ノイズ / 細胞内情報処理 / 細胞分化 / 細胞増殖 |
Research Abstract |
本研究は、EGF-Ras-MAPK回路の細胞内情報伝達反応を題材として、蛋白質分子反応、細胞内分子システム、細胞応答の各階層において反応ゆらぎとその伝搬・加工の実測と、その性質と役割の解明を目的とした。分子反応においてはEGF受容体とRasの反応、分子システムレベルでは、EGF受容体-Rasの反応回路と、Rasの下流に位置するMAPKカスケード、細胞レベルでは、EGFに対する細胞変形・運動、増殖応答を研究対象とした。本年度、分子反応計測においては、サブミリ秒領域の分子構造ダイナミクスを検出するための新たなデータ解析法(2ch HMM-BV法)を開発し、また、細胞内でRaf分子の構造分布を計測して分子活性化に伴う構造ゆらぎ変化を発見した。情報伝達分子システムにおいては、EGF受容体の会合体形成と分子動態を細胞膜上で精密に1分子計測し、運動と会合状態の状態遷移図を作った。受容体分子が会合体形成と相関した拡散係数の異なる3状態を遷移していることがわかった。さらに、EGF受容体ファミリーのうちErbB3/4がリガンド結合によって2量体化する反応キネティクスを1分子解析した。細胞レベルでは、PC12細胞の自発的運命決定(増殖・分化・細胞死)系を解析し、培養条件による自発性の変動、および、増殖因子EGF,分化因子NGFによる運命決定確率の変動を、実験とモデルで解析した。培養条件の変化により、自発的運命決定の確率が変動するばかりでなく、増殖・分化因子の効果も変動し得ることが明らかになった。
|