Research Project
本プロジェクトではRNAの質的な側面、特にRNAの転写後修飾に着目し、RNAが関与する遺伝子発現調節機構と高次生命現象の探索と解明を目的とする。バクテリアにおいて、AUAコドンを解読するイソロイシンtRNA(tRNA^<Ile>)のアンチコドン1字目には、ライシジン(Lysidine ; L)という側鎖にリジンを持ったシチジンの誘導体が存在し、この修飾によりtRNA^<Ile>のコドン解読能がAUGからAUAへと変化し、またアミノ酸受容能がメチオニンからイソロイシンへとスイッチすることが知られている。したがって、AUAコドンの翻訳にはLの修飾が不可欠である。我々は先行研究でライシジン合成酵素TilS(tRNA^<Ile> lysidine synthetase)を同定している。アーキア(古細菌)においても、tRNA^<Ile>のアンチコドン1字目にシチジンの誘導体が存在することが知られていたが、その化学構造については未同定であった。今回、我々はHaloarcula marismortuiからtRNA^<Ile>を単離精製し、アンチコドン1字目に存在する修飾塩基の化学構造を決定したところ、シチジンの2位にアグマチンが結合した新規RNA修飾であることが判明し、アグマチジン(2-アグマチニルシチジン,agm^2C)と命名した。生化学的な実験により、アグマチジンはAUAコドンの解読に必要であることが判明した。アグマチンはアルギニンが脱炭酸して生じるポリアミンの一種であり、アーキアではアルギニン脱炭酸酵素が生育に必須である理由をうまく説明できる。安定同位体標識したアグマチンを培地に添加し細胞を培養し、単離したtRNA^<Ile>を質量分析計で解析したところ、培地に加えたアグマチンがアグマチジンに直接取り込まれていることを明らかにした。また、アクマチジン合成酵素を同定するため比較ゲノム解析により候補遺伝子を絞り込み、組み換えタンパク質を取得して、in vitroでのアグマチジン再構成実験を行ったところ、COG1571に分類される遺伝子産物が、アグマチンとATPを基質としてtRNA^<Ile>のアンチコドン1字目にアグマチジンを合成することを明らかとした。この酵素をアクマチジン合成酵素TiaS(tRNA^<Ile> agm^2C synthetase)と命名した。以上の成果はNature Chemical Biology誌(4月号)のarticleとして掲載された。現在アグマチジン形成の詳細な分子機構について解析を行っている。
All 2010 2009 Other
All Journal Article (13 results) (of which Peer Reviewed: 10 results) Presentation (9 results) Book (3 results) Remarks (1 results)
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http://rna.chem.t.u-tokyo.ac.jp/