2009 Fiscal Year Annual Research Report
性フェロモン交信系の分子進化学的解析―情報発信者と受信者の協調進化の謎に迫る―
Project/Area Number |
19208005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 幸男 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (60125987)
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Keywords | アワノメイガ類 / 性フェロモン / 性フェロモン受容体 / 進化 / クローニング / アズキノメイガ |
Research Abstract |
蛾類の配偶者認識システムでは、メスが生産する性フェロモンが大きな役割を担っている。メスが放出する性フェロモンの変化はしばしば種分化の引き金になったと考えられており、変化した性フェロモンがどのようなメカニズムでオスの性フェロモン認識システムによって引き続き「同種」と認識されるようになるのかを知ることは興味深い。日本産のアワノメイガ属(Ostrinia)の蛾8種には性フェロモンの顕著な分化がみられるため、この研究に適した材料である。まず、アズキノメイガOstrinia scapulalisを材料に、この種の性フェロモン成分である(E)-11-及び(Z)-11-テトラデセニルアセテートの受容体(odorant receptor, OR)をコードする遺伝子をオスの触角からクローニングすることを試みた。OscaOR1((E)-11-トテトラデセノールに特異的に反応)及びショウジョウバエのOr83b遺伝子に相同なOscaOR2に加えて、6種類の嗅覚リセプター遺伝子候補(OscaOR3~8)をアズキノメイガから単離することに成功した。OscaOR3~8と相同な遺伝子を同属種で探索したところ、調査した8種すべてで高度に保存されていることが確認された。OscaOR3はフェロモン成分である、(E)-11-及び(Z)-11-テトラデセニルアセテートに反応を示しただけでなく、同属種のフェロモン成分である(Z)-9-,(E)-12-,(Z)-12-テトラデセニルアセテートにも反応を示した。OscaOR4も複数成分に反応を示したが、特に(E)-11-テトラデセニルアセテートに対する反応性が高かった。OscaOR5はいくつかのフェロモン成分に微弱な反応を示したが、OscaOR6~8は供試したどの物質にも全く反応を示さなかった。幅広い反応スペクトラムを示すユニークなOR3を含めて、僅かな数のよく保存されたORがアワノメイガ類の性フェロモン受容に関与していることが明らかとなった。
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