2008 Fiscal Year Annual Research Report
電気伝導性ナノワイヤーを介した微生物間相互作用の解析
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19208010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 一哉 The University of Tokyo, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (40393467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末永 智一 東北大学, 工学系研究科, 教授 (70173797)
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Keywords | ナノワイヤー / 微生物燃料電池 / エネルギー代謝 / メタン発酵 / 電極呼吸 / 鉄還元菌 |
Research Abstract |
微生物が導電性細胞外繊維(ナノワイヤー)を利用している可能性が示唆されてきているが、その物性や役割はほとんど解明されていない。本研究は、微生物ナノワイヤー(鞭毛や繊毛など)の導電性の測定や導電性ナノワイヤーの微生物間相互作用における役割の解明などを目的としている。 微生物ナノワイヤーの導電性の測定においては、プローブ顕微鏡(AFM)利用法の検討を行った。微細加工した櫛状電極の近傍に存在する微生物体から電極上へナノワイヤーを伸ばし、微生物体にAFMの導電性プローブを当てて、電極との間に電圧をかけたときの電流の測定を試みたが、電流の検出には至らなかった。現在、電極構造の改良を試みている。 微生物間相互作用における役割の解明においては、発酵細菌Pelotomaculumのナノワイヤー構成蛋白質を組換え生産し、共生相手(メタン菌Methanothermobacter)の培養系に添加する実験を行った。その結果、構成蛋白質の添加によりMethanothermobacterのトランスクリプトームパターンが変化し、メタン生成系の遺伝子などが発現上昇することを発見した。蛋白性の細胞外繊維が異種微生物間の情報伝達物質になるという報告は過去に無く、微生物間通信を媒介する全く新しいメカニズムの提唱につながった。この結果をまとめてScience誌に発表した。 セルロースを燃料とする微生物燃料電池を構築し、電極バイオフィルムから、数十マイクロメーターに及ぶ長い繊維状細胞外突起物を持つ電気生産菌を単離した。この微生物はAlphaproteobacteriaに属し、有柄性細菌群に近縁のものであったが、既存の属に属さない新規性の高い細菌であることが判明した。さらに、この細菌はグルコースを発酵的に分解できること、酢酸などの有機酸を基質に電流生産(電極呼吸)を生産してエネルギーを獲得していること、繊維状細胞外突起物は高い固体への付着性を示すことが明らかになった。以上から、この細菌は繊維状細胞外突起物を用いて電極に付着し、セルロース分解の中間代謝産物を用いて電流生産をしながら生育していると考えられた。
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