Research Abstract |
長期生態系プロットを中心とした生物多様性の評価に関わる研究として,1992〜93年に前山に設置した面積36.5ha(50×50m区画146個)の大面積プロットのうち,1992年に設置した99区画の毎木調査(胸高直径5cm以上),副本(高さ1.3m以上,胸高直径5cm未満)本数等の調査を完了した。エゾマツの更新を調査するため標高の異なる天然林の地がき地と林内に更新試験地を,育苗法確立のために雪解け等を制御する試験区を設定した。25年前の地がき試験地で数万本/haの更新が認められたが,エゾマツの更新は高標高で顕著で,微細な地形が影響した。低標高エゾマツ人工林を調査し,低標高でエゾマツが成林し,ウダイカンバとの二段林となることを明らかにした。立枯病罹病苗から産生色素がリゾクトニア菌を抑制するケタマカビを検出した。エゾシカの生態を把握するため11月(晩秋期)にライトセンサス,3月(晩冬期)にスノーモービルを使った雪上の生活痕調査を行った。その結果,林分スケールでは晩秋期と晩冬期でシカの分布に顕著な違いは認められなかった。晩秋期には,夜間に畑地に残されたビートに200頭近い大きな群れが形成されるのが確認された。その他,地元猟友会や北海道庁とも情報交換を行った。水文調査のため,7月下旬に北海道演習林人見沢,奥ノ沢の23地点において支流の合流前後の流量・水温・pH・導電率を計測し,さらに広域に20支流における流量・水温・pH・導電率の測定を実施した。GISを利用して,平水時の流量・水質の特異点を見出すとともに,北海道演習林を流出域とする渓流の基底流出の空間比較のためのフィールドデータを収集し終えた。森林の状況を把握するため,空中写真をもとにオルソフォトマップを作成し,過去の林分構造を把握するため,1958年以降の林況調査資料を整理した。優良広葉樹の流通を把握するため,大阪,広島,福岡,沖縄でツキ板に関する聞き取り調査を行った。環境教育についてどのようなプログラムの開発が可能か検討を行い,(1)本科研の成果を市民に普及啓蒙する方法,(2)北海道演習林の天然林管理に関するガイドのためのテキスト作成,(2)環境教育プログラム集作成の3点を目標とすることとした。研究の進め方について検討を行い,データベースの作成や普及についてのシステム開発を中心とすることを決めた。具体的なテーマとして地図情報の充実と森林管理業務への利用促進のためのシステムづくり,利用普及をはかるための方策の検討をあげ,実際にGIS研修会を行って必要な情報の収集を行った。
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