2008 Fiscal Year Annual Research Report
50年間の林分動態と施業履歴に基づく森林生態系の順応型管理システムの構築
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19208015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶 幹男 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00152645)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 博一 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (70174810)
白石 則彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (50292793)
丹下 健 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20179922)
山田 利博 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30332571)
石橋 整司 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30212921)
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Keywords | 天然林施業 / 林分動態 / エゾシカ / エゾマツ / 択伐 / 森林管理 |
Research Abstract |
70年以上伐採が入っていない針広混交天然林の動態を調べた結果、直径階別死亡率(%/yr)は、多くの樹種で小径木の死亡率が高い右肩下がりかほぼ一定であったが、新規加入率(%/yr)は樹種によって様々のパターンがみられた。この42年間で択伐林分の蓄積はほぼ安定していたが、針葉樹小径木の減少が認められ、広葉樹の占有割合が増えつつあった。林分施業法が導入された当初は、広葉樹中小径木を積極的に伐採して針葉樹を残す施業がなされたが、最近では針葉樹中大径木の伐採が優先される施業が影響していると考えられた。また、燕麦、大豆、ひまわりの3種の緑肥を施した播種床でエゾマツ播種試験を行った結果、発芽率はひまわりの40%に対して、燕麦、大豆はともに30%未満であった。発芽した個体の生存率でもひまわりが最も高く49%で、燕麦、大豆ともに36%未満であった。燕麦では積雪期を挟む生存率(春の生存数/前年秋の生存数)と夏季を挟む生存率(秋の生存数/同年春の生存数)とはそれぞれ58%と63%と拮抗していた。ひまわりでは68%、84%と夏季の生存率が他に比べ著しく高かった。試験した3種以外の有効な緑肥および病虫害に有効な農薬の探索など、さらに検討するべき課題のあることが示された。天然林施業への影響が懸念されるエゾシカ剥皮害については、剥皮害の発生しやすい条件と、剥皮リスクに対する施業の影響を調査・分析した。その結果、(1)残雪期のシカ痕跡は「2~3月の日射量が多く、標高が低く、近傍の補植林分面積が多い場所」で発見されやすいこと、(2)(1)の条件はシカの嗜好性が高いオヒョウの剥皮リスクが高い環境条件と一致すること、(3)他の樹種についても近傍の補植林分面積が多い場所で剥皮リスクが高いが、同じ環塊条件でも樹種間でリスクが異なること、(4)冬期に施業を行うとシカの痕跡が増える傾向がみられたが、立木への剥皮は必ずしも増えず、施業は剥皮の直接的なリスク因子ではないことなどが分かった。
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Research Products
(7 results)