2009 Fiscal Year Annual Research Report
Aktの新規基質Girdinとそのファミリー分子の機能多様性と病態における役割
Project/Area Number |
19209013
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 雅英 Nagoya University, 大学院・医学系研究科, 教授 (40183446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅井 直也 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (80273233)
榎本 篤 名古屋大学, 高等研究院, 特任講師 (20432255)
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Keywords | Akt / Girdin / 細胞運動 / 神経新生 / 海馬 / 嗅球 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
Girdinのノックアウトマウスは生後4週間以内に死亡するが、その原因は現時点では不明である。ノックアウトマウスの組織学的な解析を行った結果、中枢神経系において海馬歯状回と嗅球の形態に異常があることが判明した。海馬歯状回では神経前駆細胞の位置異常が見られた。正常では神経前駆細胞は海馬歯状回のsubgranular zone(以下SGZ)に一層から数層に限局して存在するのに対し、ノックアウトマウスでは顆粒層の中やそれを超えた分子層に局在していた。Girdinのshort hairpin RNAをレトロウィルスベクターに組み込み、海馬歯状回の神経前駆細胞に発現させてところ、ノックアウトマウスで観察されたように、神経細胞の位置異常を生じた。また嗅球の形成異常については、脳室周囲の脳室下帯(subventricular zone, 以下SVZ)から産生される神経前駆細胞が嗅球に向かって移動する過程において、遅延を生じていることが原因であった。そのためその経路であるrostral migratory system (RMS)の幅が著しく拡大していた。この結果はGirdinが出生後の海馬や嗅球の形成における神経前駆細胞の移動や位置決定に重要な役割を有する分子であることを示唆している。 Girdinとの結合蛋白を解析した結果、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)の脆弱因子として最近注目されているDISC1(Disrupted-In-Schizophrenia 1)と分子複合体を形成し、海馬における神経前駆細胞の移動と分化を制御している可能性を示す結果を得た。さらにラットの海馬を培養し、Girdinの局在を調べたところ、細胞体、神経突起、成長円錐にすべて陽性像を示した。Girdinの発現をノックダウンした結果、神経突起の長さや数が有意に減少したことから、海馬神経細胞の神経突起の形成や成熟に関与しているもと考えられた。この結果と一致して、Girdinノックアウトマウスでは歯状回の顆粒層から海馬のCA3領域へ投射される軸索であるmossy fiberの形成が著しく障害されていた。今後さらにGirdinを介したこれらの神経系の形成の分子機序を結合蛋白の同定などを通して、より詳細に解析する予定である。
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