2008 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ牧畜社会におけるローカル・プラクティスの復権/活用による開発研究の新地平
Project/Area Number |
19251002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 至 Kyoto University, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (60191938)
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Keywords | 人類学 / 国際協力 / ローカル・プラクティス / 開発研究 / アフリカ牧畜社会 / リスク・マネージメント / 在来性 |
Research Abstract |
生態資源、経済資源、社会資源へのアクセスとその配分について、以下のことが明らかになった。 (1) サンブル県西部では、2006年4月以降、ポコットとの家畜略奪による紛争が急速に激化した。サンブルは、ロロラと呼ばれる大規模集落を形成し、脆弱な国家治安維持機構を補完する防衛上の拠点としている。国内避難民化したサンブルもそこに居住しており、避難民キャンプの機能も兼備している。ここで避難民のホストとなった人々は、赤十字が救援物資として配給しなかった水容器や家畜の皮を避難民に援助しており、国際援助機関がカバーしきれない領域を補完している。 (2) ケニアおよびウガンダにおいて牧畜民による近代公教育の受け入れ過程を、漁労民と比較しながら調査した。マーサイの場合には小学校段階での留年と中途退学によって、遊牧的生活と公教育とのマッチングを図っているが、漁労民の場合には、夫の生業の不安定さを家内労働によって補償しつつ、集落の親族共同体が子どもの教育を保障している。また、調査地のラム島では大陸部からの労働移民が増加したことにともなって、漁労民の集落が大きく変容しつつあり、それが公教育にも大きな影響を与えている。 (3) 急速に普及している携帯電話を牧畜民がどのように使用しているかについてインタビュー調査をおこなったところ、援助や送金、安否確認など、従来の社会関係を深めるように用いられていることがわかった。 (4) 南エチオピアでは、国家に包摂された20世紀初頭から、政権が交代したり政策が変更されたりするたびに、マイノリティの生活が脅かされてきた歴史がある。牧畜民ガブラも、何度も近隣民族からの攻撃をうけている。こうした事態に応答して、ガブラの人々は居住する地域を移動し、さらに自らの民族アイデンティティを変更することで生存の道を模索してきたことが明らかになった。
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Research Products
(22 results)