Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舘野 和己 奈良女子大学, 文学部, 教授 (70171725)
高田 将志 奈良女子大学, 文学部, 教授 (60273827)
伊藤 敏雄 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00184672)
小方 登 京都大学, 大学院・人間・環境科学研究科, 准教授 (30160740)
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Research Abstract |
・中国乾燥地域に残された灌漑水路跡・耕地跡を高解像度のQuickBird衛星画像判読から抽出し,併せて,関中・中原地域からの影響などを検討することを目的に実施した.内モンゴル西部の黒河下流域では,規模などから前漢代設置と推定される,従来未報告の囲郭遺跡を発見した.中国人民大学魏堅教授と12月に現地調査を実施し,散在する陶片などから前漢代囲郭であることを確認し,Bj2008囲郭と命名された. ・Bj2008囲郭は,前漢代黒河本流とされる旧,流路に対して,既知の主要囲郭(K688,K710)などとは反対側に立地する.このことは,当地域における前漢代の屯田政策に新たな視点を提供するとともに,その見直しを促すものとなった. ・同地域の緑城南約1km付近に,QuickBird衛星画像から「蜂の巣状土地パターン」が判読された.同パターンの土地は,前漢代に始まり元代にも推奨された乾燥地農法の一種「区田法」施行地の可能性が想定された.現地調査および表土の花粉分析などから同地が農耕地跡であることはほぼ確認されたが,具体的な配水方法などから,いわゆる「区田法」施行地であるかについては課題として残された.なお,西夏・元代の耕地跡は,方形に近い平面パターンを示す部分が多いこと,および野菜などが栽培されたとされる「区田法」施行地とは異なり,それらは穀物栽培地の可能性が高いことが判明した. ・Bj2008囲郭付近のヤルダン地形が,QuickBird衛星画像判読結果などを加味すると,文書などから存在は指摘されてきた「代田法」施行地跡の可能性が浮上した. ・黒河下流域の前漢代主要囲郭(K688,K710,Bj2008)は,規模・卓越風向と囲郭方向の関係などがほぼ共通することを明らかにした.併せて,タリム盆地のLE遺跡が同様の特徴を有する点から,同遺跡が前漢代設置の可能性が高いことを指摘すると共に,いわゆる「楼蘭王都」問題に新たな視点を提供した.
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