2008 Fiscal Year Annual Research Report
アジアの極限環境水生被子植物カワゴケソウ科の進化と多様化
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19255007
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 雅啓 National Museum of Nature and Science, Tokyo, 植物研究部, 部長 (20093221)
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Keywords | カワゴケソウ科 / 分子系統 / 形態形成 / 遺伝子発現解析 / 分類 |
Research Abstract |
1)タイ、ラオスで植物調査を行い、材料を収集した。南ラオスから、従来考えられていたよりも多種多様なカワゴケソウ科が生育していることを確認した。鹿児島県で現地調査を行い、カワゴケソウ、カワゴロモの実験材料を収集した。 2)タイで収集した標本に基づいて系統解析と比較形態観察し、その1種はカワゴケソウ属と形態的に類似したParacladopus属の新種であることがわかった。 3)カワゴロモの花の形態形成を観察した結果、花シュートは栄養シュートがつくられた位置に内生的に、しかも茎頂分裂組織が存在しない状態で、そして周辺細胞の液胞化と離脱(細胞死)を伴って起こることを明らかにした。 4)日本のカワゴケソウ科の分類を再検討した。これまで、2属8種の固有種が分布するとされてきたが、近隣中国の種と系統関係と形態を比較して、2属6種であることが判明した。そのうち、固有種はカワゴロモ属の3種で、残り1種とカワゴケソウ属2種は中国他にも分布する。 5)カメルーンで以前採集した材料を用いて、系統解析と形態観察を行ない、Ledermanniella ntemensisを新種として発表した。 6)ラオス産のカワゴケソウ科の実生を培養して観察した結果、この科の中に、単子葉性の種が含まれること、根を欠き、植物体がシュートの基部で岩に付着するというユニークな形態をとることを明らかにした。 7)カワゴロモのSTM遺伝子とWUS遺伝子のオーソログを単離し、両遺伝子が根の内部で発現することを確かめた。これらの遺伝子は、他の植物では茎頂分裂組織で発現するが、茎頂分裂組織がないカワゴロモでは、葉が形成される根の内部で発現した。
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