2010 Fiscal Year Annual Research Report
アジアの極限環境水生被子植物カワゴケソウ科の進化と多様化
Project/Area Number |
19255007
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 雅啓 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 部長 (20093221)
|
Keywords | カワゴケソウ科 / 分子系統 / 形態形成 / 遺伝子発現解析 / 分類 / 生物地理 |
Research Abstract |
1)タイ北部、ラオス北部と南部で野外調査を行った。タイから新種を追加し、ラオスから、従来考えられていたよりもはるかに多いカワゴケソウ科が生育していることを確認した。 2)カワゴケソウ科3種について遺伝子発現解析を行なった。トリスティカ亜科の1種は、STM、WUS相同遺伝子とも茎頂分裂組織で発現するのに対して、カワゴケソウ亜科2種では、STM、WUSは初期葉原基で発現し、発生が進むとSTMが葉原基先端部から、WUSは全体から発現しなくなり、それに代わって、APR相同遺伝子が葉原基先端部で発現することを明らかにした。その結果、トリスティカ亜科のシュートは一般的な被子植物と同じ発現様式を維持しているのに対して、カワゴケソウ亜科の葉は、葉と茎の性質を併せもった複合器官であることを示唆した。 3)ラオスのカワゴケソウ亜科の分類学的研究により7新種を含む15種に分類した。カワゴロモ属は従来、葉状の根をもち、シュートが退化したと定義されてきたが、新種の中には軸状、帯状の根をもった種や見かけ上シュートをもった種が含まれ、本属が今までの理解よりも多様であることを示した。 4)カンボジアとベトナムのカワゴケソウ科の分類学的研究を行い、両国に分布する種属を整理した。 5)トリスティカ亜科とカワゴケソウ亜科で胚発生形態学的観察を行ない、ハイポフィシスの形成などから、幼根原基を形成するものとしないものが区別できることを示した。 6)カワゴケソウ科の分子系統解析を行ない、世界のカワゴケソウ科が3亜科14系統に分かれることをはじめて明らかにした。 7)カワゴケソウ科の生物地理学的解析を進め、カワゴケソウ科がアジアで起源した後、アメリカに分布拡大した後、アメリカ大陸の系統からアフリカおよびアジアに二次的に分布拡大したと推定した。
|
Research Products
(8 results)