2007 Fiscal Year Annual Research Report
野生チンパンジーにおける文化的行動の発達と新奇行動の流行現象
Project/Area Number |
19255008
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Research Institution | Japan Monkey Centre |
Principal Investigator |
西田 利貞 Japan Monkey Centre, 所長 (40011647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 晶子 沖縄大学, 人文大学, 准教授 (80369206)
中村 美知夫 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教 (30322647)
座馬 耕一郎 財団法人日本モンキーセンター, リサーチフェロー (50450234)
松阪 崇久 財団法人日本モンキーセンター, 特別研究員 (90444992)
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Keywords | 文化 / 発達 / 学習 / 流行 / 新奇行動 / 遊び / 毛づくろい / DNA解析 |
Research Abstract |
過去7年間の観察から行動発達を調べた。例えば、遊び行動は生後3ヶ月頃から一人遊びとして低木にぶら下がる運動遊び、葉や砂などをいじる物遊びとして始まり、1歳では同年齢仲間との接触を伴わない樹上での運動遊び(平行遊び)になり、2歳頃より本格的な社会遊びが始まる。木登りを競い、懸垂し落し合う。2歳後半以降は地上でのレスリング、回転を伴う鬼ごっこが中心になる。若者期以降は遊びが減るが、赤ん坊とはよく遊ぶ。遊びの大部分は、大人の行動の練習として理解できるが、性淘汰の影響も考えられた。ピルエットなどの遊びパターンは文化である可能性もあり、他の研究地の情報を収集中である。文化行動の発達過程で特筆すべきは、「対角毛づくろい」が、より複雑な認知能力が必要と考えられる「道具使用」よりも遅い年齢で出現することである。1997年初観察のヒヒ狩りを再び観察した。新奇行動が定着してきた例であろう。移入メスが他個体のレモン食いや湖水飲みを観察して、文化行動を習得する社会化の過程を記録した。シリアゲアリというマハレの伝統メニューが伝わる方法として、ある個体が採食後に放置した枯枝を、直後に他の個体が利用することがある。枯枝の二次利用は、親子間、大人同士、子供同士でも見られ、情報伝達のルートは多様であることがわかった。雄が雌より低い位置にベッドを作るのは、重い体重を支えるためではなく、発情雌を低い位置から見張るためと考えられた。DNA父子判定は、子供の半数の父親が第1位雄であることを示した。父子間に行動の共通性が強く表れるか、協力が見られるかなど、今後の重要な研究課題である。Y染色体の多型を調査し、M集団の16頭の雄から4つのハプロタイプを検出した。北の隣接集団の雄5試料すべてからMで優勢なタイプを検出し、2集団の雄が祖先を共有することが示唆された。収集資料:写真千枚、動画資料200本、野帳90冊、アリ標本600本、骨格標本1体
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Research Products
(18 results)