2010 Fiscal Year Annual Research Report
野生チンパンジーにおける文化的行動の発達と新奇行動の流行現象
Project/Area Number |
19255008
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Research Institution | Japan Monkey Centre |
Principal Investigator |
西田 利貞 財団法人日本モンキーセンター, 所長 (40011647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 美知夫 京都大学, 野生動物研究センター, 准教授 (30322647)
松阪 崇久 関西大学, 人間健康学部, 助教 (90444992)
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Keywords | 文化的行動 / 流行 / 発達 / 社会的学習 / 社会的遊び / 映像エソグラム / 行動の地域間比較 / マハレ山塊国立公園 |
Research Abstract |
これまでの長期観察データを用いて新奇行動の伝播と流行に関する分析をおこなった結果、クマバチの巣に棒を差し込んで巣の中のものを食べようとする行動が、頻度はあまり高くはないが未成熟個体の間で維持されていることがわかった。また、アブラヤシのピス食も観察された。2010年に観察されて以来2例目で、2例とも同じワカモノメス個体がおこなったが、今回はアカンボウ個体がワカモノメスの採食しているピスを奪って採食する行動も観察された。アフリカ各地で報告されているチンパンジーによるアブラヤシ食は、マハレではこれまで観察されていなかったが、この新奇行動が新しい文化として定着するか、今後観察を続けていく必要がある。対物遊びと道具使用行動の発達過程に関するデータを分析した結果、各年齢クラスによって手にする物体の形状、使用目的に違いがあることが分かった。つまり加齢に従って遊び以外の道具使用行動が多くなってゆく一方で、物体を社会的に使用するか否かは、どの年齢クラスでも違いが明確ではなかった。さまざまな年齢のアカンボウ個体を追跡し、主にアカンボウが口にするものと口にした際の母親の行動を記録した結果、アカンボウはオトナが口にしない植物の部位も口にすること、また、発達の過程で母親と同じ植物部位を母親と同時に採食する頻度が高くなることがわかった。Mグループのチンパンジーの行動目録の編集、他地域のチンパンジーの行動検索などを包括的におこない、新奇行動も多数含む映像エソグラムとしてSpringer社から出版した。チンパンジーの遊び行動の多様性と生活環境の関係について論じた一章を収録した共著が出版された。また、ソーシャルスクラッチのつつき型がいまだに一部の個体で観察されている報告をPan Africa Newsに、文化行動についての総説を執筆した(University of Chicago Pressから出版予定)。
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Research Products
(27 results)