Research Abstract |
本研究の目的は, 多言語コラボレーション環境において, 異なる言語を利用するユーザ間の知識を抽出するための, 多言語ユーザ参加型の知識創成の方法論を研究することである. 本年度は, 下記の2点を中心に取り組んだ. (1) 機械翻訳を介した多言語コミュニケーション支援の基礎研究 (2) 知識抽出を促進するコミュニケーション環境の研究 まず,多言語コミュニケーション支援の基礎研究として,翻訳リペアにおけるユーザによる精度の不正確判定を減少させる仕組みの影響について検証した.不正確判定を減少させる仕組みは,理解可能なメッセージのみのやりとりを実現できる.しかし,この仕組みはユーザの行った判定を否定し,修正するよう促す.特に即時的な対応が求められるリアルタイムコミュニケーションへの適用において,様々な問題が発生する可能性が高い.実験の結果,精度判定に基づいた送信拒否の仕組みを適用する場合,より高精度な対話を行うことができ,意思疎通が成立する可能性が高くなる. 次に,機械翻訳を介したコミュニケーションの翻訳リペア作業において,利用が想定される翻訳不適箇所を指摘する手法の効果について検証した.翻訳不適箇所指摘を用いた翻訳リペア実験を行った結果,翻訳不適箇所の指摘により,修正箇所の判定に関する学習期間の短縮効果が見られた.特に,低精度な折り返し翻訳文のリペアにおいて,提案手法による学習期間短縮の高い効果が見られた. 最後に,知識抽出を促進するコミュニケーション環境の研究として,多言語会議支援システムを構築した.多言語会議支援システムは,会議参加者全体による知識抽出の促進を目指している.多言語参加者による会議実験を行い,アウェアネス情報の共有機能は支援作業の負担を軽減できることを明らかにした.また,外国人からのフィードバック機能は多言語会議支援に有用であり,外国人の内容理解を助ける知識の抽出の可能性がある点を明らかにした.
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