Research Abstract |
自由空間を通して香りを搬送し局所的な範囲に届ける,空気砲の原理を利用した「香りプロジェクタ」の最適化に関する基礎実験とシステム構築を行った.平成20年度は,各種装置に組み込むための小型化,視聴覚コンテンツと同時に香り提示を行うための静音化,香り搬送の局所性を高める効率化の各目標に関して,流体シミュレーションおよび実験により研究を進めた. 小型化に関しては,空気砲としての性能をなるべく保ちつつ,空気砲本体の無駄な体積を極力小さくするため,開口径と押し出し体積を確保しながら,待機時の体積がゼロになる扁平型空気砲の機構を考案した.また,この基本設計に基づき,扁平型空気砲の構造を持つ香りプロジェクション実験装置の試作を行った. 静音化に関しては,これまでに検討された空気砲駆動手法の中で最も射出音の小さい,スピーカによる駆動について,スピーカ駆動電圧波形と発生する音との関連を調査した.コンピュータから任意波形を発生し,増幅してスピーカを駆動するシステムを構築した.ステップ状の電圧を与えた場合射出音は減少しなかったが,傾斜状の波形を与えると,立ち上がり時間の増加に伴い射出音は顕著に減少した. 効率化に関しては,流体シミュレーションを行い,空気砲から押し出される香気のうち,渦輪に含まれて目標まで到達する量,渦輪にならずに空気砲開口付近に残留する量,いったんは渦輪になるが,剥離して軌跡上に残留する量の割合を解析した.さらに,渦輪に含まれず残留する「尾」を,ガスセンサにより計測し,フォグではなく実際の香りでもこの現象が発生することを確認した.
|