Research Abstract |
平成19年度は,動的不確実な環境におけるオークション方式について研究を行った. 利用を想定して資源・サービスを獲得したが,実際の利用時にその資源・サービスが不要になるといったことはしばしば生じる.このとき,一旦支払ったお金が戻ってこないとすると,利用時の状況に不確実性があるとき,利用者は資源・サービスの獲得に消極的な振る舞いをする.その結果,社会全体での効率的な資源・サービスの割当てが実現できなくなる.このような場合,一部払い戻しをすることで,利用者のより積極的な取引への参加が見込める.例えば,ホテルの宿泊予約などでも,一定条件で払い戻しが受けられるようになっている.しかし,取消料の適切な設定に失敗すると,利用者の戦略的な行動を誘発し,再び適切な割当ての実現が阻まれる。この問題を解決するため,我々は,新たなオークション方式を考案した. 提案方式は,利用者に入札の取り下げを許す.まず,資源・サービスの落札者が入札を取り下げた場合の取消料の系列を設定する.オークションは複数ラウンド行われ,取消料の設定額は,高額のものから低額のものへと単調に減少する.各ラウンドで取消料を告知し,その元でm+1オークションを行う.m+1オークションとは,資源・サービスの供給量がm個のとき,m番目までの高額の入札者が資源・サービスを落札し,落札者は全員m+1番目に高い入札額を支払うオークションである. ただし,落札者が1名の場合は,落札決定を行わず,次のラウンドに持ち越す.こうして,m個の資源・サービスが割り当てられるまで取消料の設定を減少させつつ,オークションを繰り返す.すべての資源・サービスが割り当てられれば,各落札者の支払額と取消料は落札者の中で一番低い支払額に揃えられる. この方式が,誘因両立性を満たす,つまり,利用者の正直な行動を引き出せることを証明した. また,提供者の収入を増やせることをシミュレーションにより示した.
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