Research Abstract |
平成20年度は,不完全情報下における2サイドマッチング方式について研究を行った. インターネット上では同種のサービスが複数の者から提供されており,利用者はどのサービスを使いたいかという選好を持つ.また,提供者側においても複数の利用希望者がいる場合に,誰に使ってもらいたいかという選好を持つ. このような状況において,利用者はサービス品質について異なる情報を持つ場合がある.例えば,あるサービスについて利用経験がある者は品質をよく知っているが,初めての利用者は品質の判断が難しいであろう.この品質情報を共有することなくマッチングを行うと,事後的に別のサービスを使いたかったという不満を持つ利用者が現れる.しかし,個々の利用者にとっては,品質情報を提供すれば,自己の利用希望サービスに対する競争率が上がるため,情報提供する誘因を持たない.このため,安定なマッチングの実現が困難になる. この問題を解決するため,新たなプロトコルを開発した.まず,利用者に条件付きの選好をシステムに申告させる.これは,サービスA,Bが存在するとき,例えばAの反応時間が10秒未満であれば,A>B,10秒以上であれば,B>Aといった申告である.記号>は選好関係を表す.また,システムは利用者に各自の持つ情報提供を依頼する.次に,システムは利用者にランダムに順位をつけ,利用者からの提供情報を用いるか用いないかで分岐するゲーム木を生成する.次に,ゲーム木の葉の部分から根に向かって,各選択点で提供者が損をしない経路を選択する.提案方式は,つねに利用者からの情報提供を保証するわけではないが,計算機実験により,ほとんどの場合において,合理的な利用者は情報提供に対する誘因をもつことを確認した.これにより,従来手法と比較してより安定なマッチングの実現が可能となった.
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