Research Abstract |
コミュニティにおけるコンテンツ・サービス協創支援においては,多くの意見を集約する仕組みの理解が重要である.本研究においては,集約メカニズムを調べる対象として,オークションにおける即決価格に着目した.即決価格は,最近のインターネットオークション市場において,利用が増加しているもので,売り手によって設定された即決価格に対して買い手が入札を行えば,買い手が財を即落札できるというものである.売り手は開始価格と即決価格を設定することで,一方,買い手は入札行動を行うことで,財の価値に対する意見を表明しているとみ なせ,それらの意見が集約されて取引価格が決定されることになる. まず,Yahoo! JAPANオークションを運営するヤフー株式会社から提供を受けた11,921件のオークションデータの解析を行った.その結果,売り手の主要な戦略として,(戦略1)即決価格を設定せず,非常に低い開始価格を設定する,(戦略2)即決価格を設定し,開始価格を即決価格とほぼ同額に設定する,の2つが存在することを明らかにした. つぎに,実データの解析結果をもとに,2人の売り手と3人の買い手が存在する2ステージゲームのモデルを作成し,ゲーム理論の観点から解析を行った.その結果,買い手が財の購入失敗リスクを回避しようとする傾向が高いとき,一方の売り手が即決価格を設定すれば,もう一方の即決価格を設定しない売り手の収入も増加するという関係があることが明らかとなった.すなわち,競合関係にある2人の売り手が,即決価格を通して,実質的に協調的関係に達することが可能になった.これは,意見表明空間の設計という観点から,意見集約メカニズムの一端を解明したと言える。
|