Research Abstract |
アミノ酸残基配列,タンパク質立体構造,保存情報等の最新データを用いて、サポートベクタマシン(SVM)によるO型糖鎖修飾部位の予測を行い,修飾機構を検討した.特に,各修飾部位をアミノ酸配列上で群発するものと散発的なものに二分し,予測に有効な情報や,修飾部位周辺の統計性に違いを見い出した.進化的保存領域や天然変性(disordered)領域との関係でも,両者で異なる特徴が見られた. 1. O型糖鎖修飾のアノテーションがある哺乳類タンパク質全98つ上で,452部位が修飾されている.それらを一定の基準で,群発307部位と散発145部位に分け,各々に対してSVMによる予測を行った.その結果,前者では修飾部位周辺の一定帯域におけるアミノ酸組成比が,後者ではより近傍における位置特異的なアミノ酸の存在が,予測に寄与していた. 2. 修飾部位周辺のアミノ酸配列に対する主成分分析,独立成分分析でも両者に違いが見られた.特に,散発的修飾部位に対しては,位置特異的な特定のアミノ酸が独立成分として現れた. 3. 群発的修飾部位の周辺には,平均より有意に存在比率が低いアミノ酸がいくつか見られた.そこで,進化的変異による修飾部位出現の可能性を検討した.即ち,PSI-BLASTを用いてPSSMや頻度を比較し,GTOPにより進化系統樹での変異過程を検討した. 4. 修飾部位はdisordered領域に多く含まれていた.DisEMBLにより予測したdisordered情報を付加することで,特に群発的修飾部位に対して予測精度が向上した.進化的保存,天然変性との関連から,O型糖鎖修飾が構造安定性に寄与する機構を検討した. 5. SVMに対して,半教師あり学習を適用した.また,各アミノ酸に隠れ状態の存在を仮定し,Marginalized kernelを用いた. 6. 予測結果から示唆される未知の修飾部位に対して,分子生物学的実験でその正否を検証するため,ポリペプチドの合成と酵素抽出までを完了した.
|