2009 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質フォールディングの大規模シミュレーションと大量軌道データ解析法の開発
Project/Area Number |
19300101
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
太田 元規 Nagoya University, 大学院・情報科学研究科, 教授 (40290895)
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Keywords | 分子動力学 / シミュレーション / スーパーコンピュータ / 軌道解析技術 |
Research Abstract |
80アミノ酸残基からなる置換型λリプレッサのフォールディング過程を解析した.一昨年度,AMBERを利用したシミュレーションを実施し,50nsの軌道を400本得た.全構造中の,最小RMSD値は4.72オングストロームであり,λリプレッサが完全な天然状態ではないが天然状態近傍までフォールドしていることが分かった.昨年度は,λリプレッサがどのような経路を通ってフォールドするかを調べるため,距離マップを用いて構造を階層的にクラスタリングし,その構造遷移図を作成した.全体像を把握するためにしきい値を7オングストロームに設定してクラスタリングを実施し,顕著なクラスタ遷移だけに着目したところ,おおよそ5種類のクラスタ集団が確認された.今年度はクラスタ解析を更におしすすめ,各クラスタ集団の遷移課程を詳しく調べた.その結果,もっとも初期過程であらわれるクラスタ集団ではランダム構造からヘリックスが形成されるが,このヘリックスがジッパーとよばれる構造となり,クラスタ遷移がおきることがわかった.ジッパーは1番目と4番目,そして2番目と3番目のαヘリックスの接触でも特徴付けができる.これらαヘリックス間の接触については昨年度にデータを取得していたが,ジッパー構造として再認識したことでフォールディング課程がより整理された.λリプレッサの場合,天然構造よりもコンパクトとなるクラスタ集団も確認された.これらはαヘリックスが一部壊れることで強いパッキングを達成していた.また,データベースに登録されている構造はダイマーだが,その相互作用面にあたるヘリックスは構造形成能が低いこともわかった(シミュレーションはモノマー).これらの他に,β型のタンパク質についてもシミュレーションの対象とするためにコンタクトオーダを調べ,ルブレドキシンをターゲットとして選定した.10nsの予備計算をAMBERで実施した.
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