2007 Fiscal Year Annual Research Report
長期記憶の細胞基盤としての鏡像的シナプス新生と廃止
Project/Area Number |
19300108
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小倉 明彦 Osaka University, 大学院・生命機能研究科, 教授 (30260631)
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Keywords | 記憶 / シナプス可塑性 / シナプス新生 / シナプス廃止 / 脳切片培養 |
Research Abstract |
長期記憶の細胞基盤である長期シナプス可塑性の機構解明は、LTP・LTDに代表される短期可塑性のそれに比べて遅れている。私はこれまで「LTPの繰り返し誘発後のシナプス新生を伴った伝達強化(略称RISE)」と「LTDの繰り返し誘発後のシナプス廃止を伴った伝達弱化(略称LOSS)」を見出して、長期可塑性のモデル現象として提唱し、解析を行ってきた。本課題は、RISE-LOSS間の鏡像性(これまで得られた性質が、正負の方向以外は多くの点で類似していること)を手がかりにして、細胞内機構の解明を進めることを目的とする。本年度の主な成果を以下に記す。 1.LTPの繰り返し誘発後にLTDを1回誘発すると、RISEの成立が阻止された。これはRISEとLOSSが細胞内機構において共通部分をもち、互いに干渉し合うことを示しており、鏡像性を生み出す原因である可能性がある。 2.RISEの誘発シグナルとして、脳由来神経栄養因子(BDNF)が関与することはすでに示しているが、今回LOSSの誘発シグナルとしてBDNF前駆体の関与を想定し、これを分散培養系に投与したところ、シナプス廃止が誘導された。 3.これまで標本全体を刺激して標本全体に引き起こしてきたRISEを、局所刺激によって局所的に誘発することに成功した。この入力特異性は、RISEの長期記憶の基盤としての適格性を裏書きする。 4.RISEの成立へのCa透過性AMPA受容体の関与を生理学および生化学的に示した。また、同分子がまず樹状突起幹に発現することを免疫電顕で示した。これはシナプス新生機構のうち、分裂仮説でなく発芽仮説を支持する。
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