2008 Fiscal Year Annual Research Report
RNA干渉の応用による視覚野可塑性への神経栄養因子関与機序の解明
Project/Area Number |
19300117
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
津本 忠治 The Institute of Physical and Chemical Research, 津本研究ユニット, ユニットリーダー (50028619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
惣谷 和広 独立行政法人理化学研究所, 津本研究ユニット, 研究員 (80415207)
蒋 斌 独立行政法人理化学研究所, 津本研究ユニット, 研究員 (30446520)
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Keywords | 脳 / シナプス / 可塑性 / 大脳皮質 / 視覚野 |
Research Abstract |
大脳皮質視覚野ニューロンは感受性期と呼ばれる生後発達の一定の時期に片目を遮蔽すると、その眼に対する反応性を消失するといった変化を生ずる。また、視覚野シナプスは特定の入力によって長期増強(LTP)や長期抑圧(LTD)を起こす。この視覚野可塑性は発達脳可塑性の代表的な例として古くより研究され、特定のシナプス受容体や神経栄養因子等の関与が示唆されてきた。ただ、これらの研究は種々の阻害薬を使った薬理学的方法や遺伝子ノックアウトマウスを使った方法でなされたものであった。本研究は、数年前に線虫で発見されたRNA干渉をマウス脳に適用し、目的の蛋白質発現を抑えるsmall interfering RNA(siRNA)を電気穿孔法で大脳皮質視覚野に注入し、視覚野可塑性のメカニズム解明をめざした。 具体的には、脳由来神経栄養因子(BDNF)のsiRNAを入手し、それをマウス大脳皮質視覚野に注入しBDNFの発現を抑えた標本の作製を試みた。しかし、使用した電気穿孔法ではsiRNAが十分に視覚野ニューロン内に入らずBDNFタンパク質の発現を完全に抑えることができなかった。一方、マウス視覚野スライス標本において代謝型グルタミン酸受容体の5型(mGluR5)の特異的阻害薬がLTP誘発を阻止することを見出したので視覚野可塑性のメカニズムとしてmGluR5の役割がより重要と思われた。したがって、mGluR5の関与に焦点を当てて研究を遂行したところ、mGluR5の作動薬がLTP様シナプス増強を起こすこと、この変化後LTPを起こすはずの高頻度刺激がLTPを起こせなくなるという閉塞(occlusion)現象が生ずることを見出し、mGluR5はLTP誘発に関与していることを証明した。さらに、その後、mGluR5の活性化によってendocannabinoid(eCB)が生じ、これが高頻度刺激を受けないシナプスにheterosynaptic LTDを起こす一方で刺激を受けたシナプスでは放出されたBDNFがeCBの抑圧作用を押さえhomosynaptic LTPを維持していることを発見した。
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Research Products
(5 results)