2008 Fiscal Year Annual Research Report
久山町研究における病理所見別にみた変性型認知症の危険因子の決定とその意義
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19300125
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩城 徹 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 教授 (40221098)
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Keywords | 認知症 / アルツハイマー病 / 耐糖能異常 / 糖尿病 / 老人斑 / 神経原線維変化 / 生活習慣 |
Research Abstract |
久山町における病理疫学コホート研究によって、糖尿病(DM)および耐糖能異常(IGT)者はアルツハイマー病(AD)の危険率が有意に高まる事を報告している。ADは病理学的に老人斑と神経原線維変化を特徴とする変性疾患であり、どの病理所見が耐糖能異常とより関連が強いかを検討することは、その病態機序の関連を明らかにする上で、重要と考えられる。そこでADの病理学的変化を定量的に評価し、耐糖能異常との関連について統計学的に検討を行った。さらに今回は、1988年の健診データを用いて、その他の生活習慣関連因子についても検討を行った。1998年10月1日〜2003年3月31日の期間に死亡した久山町住民290名のうち、九州大学で解剖した連続剖検は211例であった。そのうち、1988年の健診を受診した165名の剖検脳データベースよりパラフィン切片を用いて、平野銀染色及びタウ抗体免疫染色を行った。DMおよびIGTの診断は、日本糖尿病学会の診断基準(1999年)に準拠し、検診で上記診断基準に合致した症例とした。解析は累積ロジットを利用した比例オッズモデル(性、年齢を調整)を行った。165例のうち、IGTは71例(43%)(うちDMは28例(17%))であった。IGTの有無と老人斑の程度、食前インスリンと老人斑の程度、食後血糖と老人斑の程度、HOMA-R指数と老人斑の程度に、有意ではないが軽度の相関を認めた。食後2時間のインスリン値と老人斑の程度に有意な相関(RR1.55、p=0.029)が認められた。その他の生活習慣関連因子では、コレステロール、LDL-Cと老人斑の程度に、有意ではないが軽度の相関を認めた。以上、老人斑の定量的データとインスリン値に相関が見られる等、いくつかの生活習慣病危険因子とアルツハイマー病の脳病変との関連を示唆するデータが得られた。
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