Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大熊 康修 千葉科学大学, 薬学部, 教授 (20127939)
高橋 良輔 京都大学, 大学院・医学研究科, 教授 (90216771)
上原 孝 北海道大学, 大学院・薬学研究院, 准教授 (00261321)
金子 雅幸 千葉科学大学, 薬学部, 講師 (10322827)
出雲 信夫 横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (70368976)
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Research Abstract |
1.小胞体関連分解(ER-associated degradation;ERAD)は,小胞体の変性蛋白質を小胞体から細胞質に排出し,ユビキチン-プロテアソーム系により分解する小胞体ストレスに対する防御機構である.ERADに関与するユビキチンリガーゼHRD1は,アルツハイマー病の原因蛋白質β-amyloid(Aβ)の前駆体蛋白質(amyloid precursor protein;APP)をユビキチン化し,分解促進することで,Aβの産生量を低下させる.本研究では,HRD1を介したERAD系の抑制は,APPの蓄積とそれに伴うAβの産生増加をもたらすとともに,小胞体ストレスと神経細胞死を誘発することが示めされた.このことから,ERAD系の破綻は新たなアルツハイマー病の発症原因となりうる可能性が示唆された. 2.小胞体のタンパク質の分解に関与するユビキチンリガーゼHRD1は中脳黒質,海馬・歯状回,大脳皮質,線条体,淡蒼球,小脳プルキンエ細胞など,広範囲に脳神経細胞に発現しており,グリア細胞には発現していなかった.また,HRD1の安定化や基質認識に関与するSEL1もHRD1同様に分布することが分かった.これらの結果から,HRD1やSEL1を含むERAD分子は脳神経細胞のタンパク質分解機構に関与していると推測され,神経変性疾患などの疾患との関連性が期待される. 3.HRD1の各領域の役割について検討したところ,HRD1の小胞体膜貫通領域はHRD1タンパク質の安定化に寄与し,さらに基質タンパク質の小胞体から細胞質への輸送に関与していることが明らかになった.また,プロリンに富むC末端領域は,ユビキチン化した基質の分解に関与することが判明した.以上の結果から,HRD1の新たな機能が明らかとなり,哺乳類におけるERAD機構の解明に寄与した.
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